【息が止まる!注記作業】発掘調査員日記⑨

発掘調査員日記、最終回である第9回は、出土した土器への注記作業や接合についての話です。これまでの記事はこちら

注記作業

今回の調査では、主に弥生土器の破片が地中から出てきました。それらは全て記録し保存していくのですが、具体的にどう作業を進めるかというと、土器を全て洗い、注記をして、パズルのように接合し復元していきます。その後、一部は写真を撮って、実測、そして報告書へ記載されます。素人である私は、注記作業の部分まで(少しだけですが接合も)させてもらいました。

注記作業とは

注記、注記と書いていますが、実際に何をどうするのかというと、いつ・どこから出土したのかをアルファベットや略語で直接土器に書いていく作業です。この作業が始まる前に、「向き不向きがあると思うのですが、やってみますか?無理して参加されなくてもいいです」と職員さんから言われていました。注記についての説明を受けた時から面白そう!やってみたい!と思っていたので、参加しますと即答したものの、実際にやってみると、これが結構難しく根気のいる作業でした。

ここでもやはり、発掘調査用の特別なペンや筆があるわけではなく、面相筆を使って土器に直接、絵の具や墨汁で文字を書いていきます。文字が大きくなってしまうと、土器を写真に撮った時に文字に目が行ってしまうので、できる限り小さな文字で書いていかなければなりません。

米粒以下の文字を書く

良いお手本として見せてもらった注記済みの土器を見せてもらうと、書いてある文字は2mm以下。2、3cm程度の四角い土器の破片が多いのですが、その破片の裏面(内側)や、2、3mm程度しかない側面に、2mm以下の文字を書いていくのです。米粒より小さな文字を、そして誰もが読める文字を、凸凹した土器の表面に書く、書く前から分かってはいましたが、難しい。初めは特に、土器を持つ左手、筆を持つ右手、両手に力が入り、首から肩にかけてガチガチになってしまいました。

「今日は調子がいい!」「こりゃあ、手が攣るね!」「朝一番はやっぱり絵の具のノリが違う!」「息するの忘れてしまうね!」「あ〜上手くいかん!」

ちなみに間違ってしまった時は、土器を洗って絵の具を落とし、乾かして上から書き直します。「間違ってしまったら仕方ありませんが、絵の具部分を洗うことは土器を削ることになってしまうので、できるだけ間違うことのないよう、お願いします」と職員さん。

土器の外側、内側

難しく感じたのは、小さな文字を書くことだけではありません。土器の外側、内側、上下の見分けが難しい。今回発掘した弥生土器は、この程度の大きさです。

注記するのは、土器の破片の側面。しかし側面は凸凹しており書きづらいことが多く、その場合は土器の内側かつ下部に書かなければなりません。なぜなら、側面または内側の下部が写真を撮る際に一番目立たない場所だからです。

破片を見ただけで職員さんは、「こっち向きですね、ここに書いてください」とすぐに見分けるのですが、これが難しい。見分ける際のポイントはいくつもあるようですが、最終的には「勘ですね!」と。いくつか教わったのは、まず1つ目に厚さ。土器は上部の方が薄く、下部にいくにつれて分厚くなるそうです。次にカーブの具合。小さな破片であっても、平なものはほとんどありません。カーブの具合によって、例えば土器の口縁部、底部というのが分かり、上下や外側内側というのも分かってきます。他には、表面についた煤の跡や模様、土器を作る際の指の痕(そこに親指を置いてみると気持ち良くピタッと当てはまります。弥生人と繋がった気分に!笑)などなど。

慣れて来る頃には発掘調査期間終了

注記作業を始めて3日目頃、(土器のかけらの上下や裏表は見分けられませんでしたが)やっと文字を書くことに慣れてきたのですが、それと同時に出土した土器への注記が終わり、雇用期間も終了してしまいました。もう少し書きたいという気持ちと、解放された〜という気持ち半々。

セメダインで接合

注記作業をしていると、時々、「この質感の土器さっき見たぞ?」「これとこれ、くっつきそう・・・?」ということがあります。また、力の入れすぎか、土器自体がもろいのか、割れてしまうことも。そんな時は接合と言って、破片と破片をくっつけます。それも、セメダインで!ここでも、特別な接着剤があるのかと思っていました。

接合の方法は、くっつけたい断面にセメダインをたっぷりつけて、手で抑え、乾くまでしばらく待ちます。乾いたら、余分なセメダインを爪楊枝などで取り除いて、完了です。

 


 

 

出土品(土器)の整理

注記作業を終えた土器は、出土箇所・日付別に紙箱に入れ、コンパネの中に並べて整理していきます。

発掘調査日記の中に何度も、発掘調査に特別な道具を使うことはないと書いてきましたが、この整理作業の際の紙箱が一番驚きでした。こちら、見てください。綺麗に折られた紙箱の山!サイズ別にまとまっています!!!

私がさせてもらったのは紙箱に土器を入れて、順番に並べる作業まででした。この後は、職員さんの手によって仕分けられ、一部は写真撮影・実測のち報告書に記載されるそうです。

おわりに

さあさあ、長かった(?)発掘調査員日記も、ここで最後。まずは、ここまで読んでいただきありがとうございました。多々誤りもあるかと思いますが、どんな仕事なのか何となくの雰囲気だけでも伝われば嬉しいです。個人的には、記録として残すことができたので満足しております(笑)。そして何より、この仕事を知れて良かったですし、自分に馴染みのある地域の発掘調査に関わり、この土地の歴史や文化を学べたことは、貴重な体験となりました。と、なんともありきたりな言葉の羅列になってしまいましたが、心からそう思っています。またタイミングが合えばやってみたいし、学び続けたいものです。

もし、発掘調査の仕事をやってみたいなという方がいらっしゃれば、お住まいの、もしくは働いてみたい自治体のHPやハローワークで探してみると良いかと思います。市区町村に大抵1人以上は埋蔵文化財担当者がいらっしゃり、市区町村が調査員の募集をしているとのことでした。

 

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