【テントの設営、道具の説明】発掘調査員日記①

発掘調査員としての3ヶ月間を時系列で仕事内容別に綴る発掘調査員日記。今回はその第1回【テントの設営、道具の説明】について。※発掘調査や考古学については全くの素人ですので、その辺ご理解の程よろしくお願いします!!!

勤務初日は12月初旬。発掘調査場所の伐採作業が遅れ、予定より数週間遅れてのスタートです。まだ日や時間によっては暖かいと感じる日がある頃、新しい長靴を履き、作業着を持っていないので山用の服を着て集合場所へ。今回の調査は私含め8人が参加、うち2人は市の職員さん、2人はベテランさん、残り4人が新規のバイト。簡単な挨拶と自己紹介を済ませ早速作業が始まります。

テントの設営

まずはテントを設営しますとの指示。黄ばんだ布地に錆びついた脚、かなり年季の入ったテントを皆で声をかけ合いながら組み立てます。地面にコンパネを敷き、学校行事でよく見かけるあの緑色のパイプ椅子と青いコンテナをテーブル代わりに並べ、隅にストーブを置いて私たちのベースキャンプが完成。テントの隣には綺麗な仮設トイレも到着しました。なんとも質素な雰囲気ですが、横幕で覆われたテントの中にいるとなんだか秘密基地のようで、まだ掘り始めたわけでもないのに、楽しくなってきました。


基地感漂う私たちのベースキャンプ

設営がおわった後は、土のうの紐結び。言われた通りに淡々と紐を結び続けます。土のう袋、何に使うんだろう?聞かなくて正解でした。この後、嫌でも知ることになります。

 

道具の貸出、説明

テントの設営、土のうの紐結び、次は道具の貸出と説明。道具は今回新調したものが多いようです。地域によって呼び名は変わるそうですが、私たちが教えてもらった呼び名はこちら。ヘルメットと右側に並ぶ青色の道具、計6点が1人ずつ貸し出された道具です。

移植ごて、まがり(移植ごてを曲げたもの。曲げた状態で販売はされておらず自分達で曲げる)、根切りバサミ、のこぎり、手ぐわ、手がき。この6つが毎日使うことになる道具です。うーん、慣れない呼び名・・・。これは帰ったら忘れてしまいそう。

移植ごてやまがりは掘った土を集め、根切りバサミやのこぎりは根っこを切る時に使い、手ぐわや手がきを使って掘ります、とのこと。「詳しくは掘りながら説明します」と、考古学者である市の職員さん。面接の時にいた方で、話しやすく、質問すると素人でも分かりやすく具体的な固有名詞とともに説明をしてくださる現場責任者の方です。図書館の資料集が何冊も頭の中に詰まってそうです。なんと(!!!)登山好きだそうで、勝手に親近感が湧きます。

簡単な道具の説明を受けた後、この6つの道具を自分の名前が書かれた土のう袋に入れ、テントから歩いて数分の発掘調査場所へ向かいます。お寺の裏道を通って、着いたのは竹藪の中。ちょっとした登山のような、雨が降れば足場が悪くなりそうな道です。これから毎日テントと竹藪を往復することになるので、良い運動になりそうです。

発掘調査はできればしたくない?!

面接時に、今回の現場は急な斜面です、と何度も念を押されていたので覚悟はしていました。着いてみると、確かに急な斜面。斜面の下は大きなお家が何軒も連なり、その向こうには道路を挟んで田んぼや畑が広がります。発掘箇所は、斜面の中腹辺りでしょうか、竹藪のひと区画だけ伐採されており、数カ所既に掘った後があります。

「発掘調査はできればしたくないんです」

とその職員さん。私の頭は、理解が追いつきません。私たち発掘するために雇われたんじゃ・・・?!

「発掘調査をすることは、遺跡を掘り返すこと。掘り返すことは遺跡を傷つけること。今ある技術では傷つけずに掘るのは難しく、考古学者としては遺跡は傷つけたくありません。ただし、開発工事によって地中にある文化財が破壊されてしまう可能性がある場合は、事前に調査をして(緊急調査と言う)、正確に再現できるよう記録に残します。」

聞くところによると、土砂災害の対策として竹藪で覆われた斜面の一部が工事される予定とのこと。工事途中になんか出てきたぞ!!!では、遅いのです。各市区町村には、遺跡がある可能性が高い場所が記された地図があるようで、道路工事や今回のような斜面の工事、家や工場など何かしらの建物を建てる際はその地図を確認しながら発掘調査が必要かどうか見極め、試掘調査、のち本調査となるそうです。地図は、発掘調査期間の最後の方で見せてもらいましたが、公には出していないとのことでした。市区町村によっては、HPに掲載していたり、担当者の頭の中にあり地図になっていなかったり、方針はそれぞれのようです。

掘削作業前に、撮影

今回の発掘調査場所は既に半年以上前に試掘調査を終えており、本調査までの期間が開くため、掘った場所には土のうがぎっしりと埋められています。まずはその土のうを取り出し、邪魔にならないよう脇に積み上げます。

「最初っから、土のう運びなんて、発掘調査でこんなことするとは思ってなかったでしょう・・・」

と、職員さん。体を動かすことは苦ではない人間なので、なんだか面白くなってきました。8人でやればあっという間、とはいえ結構な数の土のうです。半年以上土に埋まっていたので、かなり土のうの中の土が固くなっています。

土のうを一通り取り出した後は、斜面上に積もった葉っぱや土を簡単に取り除き、本格的な掘削作業前に写真撮影をするとのこと。掘る前の状態を記録として残しておくのです。右も左もわからない私はベテランさんの指示に従い、使い慣れない “手がき”で表面の土を下へ落とし、同じく“手がき”または“移植ごて”を使って土を集め、“えぶ”ですくって土のうに詰めます。

撮影した写真は報告書に掲載され、なんと私たち8人の名前もその中に残るとのこと!数年後になるそうですが、その報告書、出来上がるのが今から楽しみです。

 


<向かって左側から撮影>土のうを取り出す前。試掘調査から時間が経ち落ち葉が土のうの上に溜まっています

 


<向かって右側から撮影>土のうを取り出し写真撮影のためにお掃除した後

・・・その2へ続く

COMMENT

タイトルとURLをコピーしました