3ヶ月にわたる発掘調査の日々を素人が綴る、発掘調査員日記第4回は調査場所である竹藪での掘り作業の大変さについて。他、発掘調査に的した服装等についても紹介したいと思います。これまでの記事はこちらからどうぞ。
竹藪の中での作業
休憩するには気持ちいいけれど・・・
発掘調査というと、だだっ広い平地での作業がよくテレビなんかで見られますが、今回の調査場所は稀に見る竹藪の斜面上での作業。写真の左手前にある足場が組んである箇所と、伐採されているひと区画が調査の対象です。
職員さんも、こんな発掘調査場所は珍しいですと何度も言っていました。発掘調査が始まってすぐの12月上旬頃は、日によっては15度前後。鍬や鋸で地味に体を動かす作業が続くと、暑く感じることもあり、休憩中は竹藪の中で涼んでいました。風が吹いた時に揺れる葉っぱの音が心地良い・・・。
見上げる分はいいんです。光で透けている葉や、葉の隙間から見える青空、綺麗でした。まあ、しかし根元を掘るとなると話は変わってきます。
50〜60cmは竹の根ゾーン
2つ前の記事【ハケの出番なし、掘る切る運ぶ】に、掘り作業について書きましたが、
発掘調査では、地山まで掘り下げ、地山=“自然のままの地盤”の形を露わにさせることで、どのような形のお墓や住居が作られたのかを調べていきます。地山までの深さは、場所によりますが数十cmということもあれば、1m、2mと人間1人分掘り下げることもあるようです。今回の発掘調査場所では一番深い所で70cmくらいでしょうか。
その約70cm程度掘り下げていく際、障害物となるのが竹の根っこ。表面から約50〜60cmは竹の根が土を支配しており、その根っこゾーンを越えて、さらに数十cm掘らなければ地山に辿り着くことができません。それが、なかなかに、大変だったのです。
竹の性質
竹の根との格闘は約1ヶ月半に及びました。掘っても掘っても次の根が出てきます。地上では竹は整然としているように見えますが、地下では複雑に絡み合っています。根を鋸で切りながら掘り下げていかなければなりません。竹の根切り、除去ならお任せください!と言えるまでに、皆鍛えられました。ここまでくると、嫌気がさすどころか、竹って実はスゴいんじゃないかと思い、ググってみました。
1日で100cm伸びる?!
竹の成長は速く、1日に1m以上伸びることもあるそうです。地表に出てきた頃は1日に数cm、それが10日ほど経つと1日に数十cmとぐんぐん伸びていきます。なぜ速いのかというと、竹にあるあの節目。約60個ほどあるそうですが、それぞれの節目で細胞分裂が繰り返され伸びていくから速いのだそうです。多くの植物は先端部分の成長点が細胞分裂により伸びていきますが、竹の場合、先端部分とそれぞれの節目が同時に各々伸びていくということです。
竹の根はもっとスゴい?!
竹の根は1年の間に7〜8mほど伸びるとのこと。ただし、よくある木の根とは違って竹は地下茎で繋がっており、地上の竹から得た栄養分を地下茎に蓄え、次なるタケノコがそこから生まれ成長していくそうです。
地下茎から出たばかりのタケノコ。この状態でみることはそうそうありません
確かに竹藪を思い浮かべると、竹以外の植物が入っていく余地がないほど、竹ばかりが密集していますよね。地下に這った根が次から次にタケノコを生み出し、食べる動物や人間がいない限りはすぐに育ってしまうので、あのように(笑)なってしまうようです。かぐや姫が数ヶ月で成人になってしまうのも、納得です。
お陰で竹は厄介な植物だと思われることも多々。反対に、その性質を活かすことはできないだろうかと研究されている方もいるようです。竹について分かりやすく説明されているので、面白いなと思った方はこちらもぜひ▶︎近畿大学 農LABO 竹の不思議な生態と構造を応用し、ものづくりのさらなる技術発展をめざす。
根元部分は、大きいと、兎に角除去が大変でした
おそらく竹の根の先端。ここから伸びていくのでしょうか・・・
調査中に掘って、切った根。最終的にはこの写真の倍くらいの量になりました
地下に埋まっているタケノコは、トースターで焼くと香りがよく、とても甘かったです!
竹の根っこゾーンから出てくる弥生土器
掘っても掘っても根っこ、ときどきムカデ、そんな竹藪での発掘作業。新聞の見出しを飾るような遺物は出てきませんでしたが、弥生土器の破片は沢山出てきました。詳しくは前回の記事に書いていますので、こちらも併せてどうぞ。
発掘調査時の服装
通勤路
このような場所での作業。私含め、作業員さんたちの服装はどんなものだったか、少し、紹介しておきます。
動きやすく汚れても良い格好で、としか指示はなかったので、作業着を買うことも考えましたが、今回きりだったら勿体無いなと思い、私は上下、使い続けているモンベルの登山服を着ていました。他の方々は、ザ・作業着といった格好の方がほとんどでした。ポケットがやたら多い(笑)、土木や建築関係のお仕事をしている方々が着ているような、あの服です。ジャージや登山服でも問題はなかったのですが、鋸や手がき、手ぐわなど刃物を使うので、その辺は要注意かなと思います。
靴は、長靴と指定があったのでワークマンで購入した長靴を使っていました。徒歩+バスで通勤予定だったので、いかにも!な長靴は避けたかったのです。冬用のモコモコした靴で作業用ではないのですが(笑)、防水で足の指先まで暖かかったので冬場の作業には役に立ちました。ソールも雪の上で歩けるようにとしっかりしていたので、斜面での作業でも踏ん張れました。夏場はやめた方が良さそうです。
聞くところによると、農作業されていた方が発掘現場のバイトに来ることも多いようで、農作業用の服装(モンペなど)や、特に女性だとエプロンを着たり、手元足下は汚れやすいので腕カバー足カバーをつけたりするそうです。それから作業する中で、いわゆるうんこ座りのような姿勢をとることが多いのですが、苦手な方は膝を地面に着くことになるので、膝カバーを付けている方もいました。
あとは、帽子でしょうか。ヘルメットを被っていることが多いですが、その下につばのある帽子を被れば日除けになります。夏場の作業の話も色々と聞きましたが、日焼け対策が重要!ということでした。肌を出さない服で、蚊取り線香は常に近くに置いておくとのことでした。
今回は、この辺で以上です!次回は、掘り作業が一通り終わった後の、撮影や測量についての話です。それでは、また!
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