【お掃除、撮影、測量】発掘調査員日記⑤

3ヶ月間の発掘調査を仕事別に書き進めている発掘調査員日記。第5回は、掘り作業が終わった後の【お掃除、撮影、測量】の仕事について。これまでの記事はこちら

恥ずかしながら、この仕事に関わるまで、発掘調査の仕事=発掘する=ハケを片手に掘り作業、という発想しかありませんでした。しかしそれは、発掘調査員の仕事のほんの一部。もちろん発掘現場や調査期間(雇用期間)等により、素人(アルバイト)がさせてもらえる仕事内容は異なるかとは思います。私の経験談となりますが、発掘調査員日記⑤以降は掘り作業後の仕事について順に書いていきたいと思います。

記録保存

埋蔵文化財の発掘において、掘り作業以外の仕事はたくさんあり、大きく2つに分けると、現場で行う作業【お掃除、撮影、測量など】と、現場から持ち帰って行う作業【土器洗い、注記作業など】があります。

現場で行う作業である【お掃除、撮影、測量】これらは、掘り作業が終わった後、もしくは同時進行で進めていく作業。順序はこの通りではなく、進み具合等により、職員さんの指示に従って進めていくことになります。

何のために【お掃除、撮影、測量】するのか?ー 記録保存のためです。

埋蔵文化財の発掘は、何か埋まってそう、じゃあ掘ってみよう、なんか出てきたぞ、博物館に展示、以上!ではありません。そもそも発掘はできればしたくない、ということを前の記事にも書きましたが、「土木工事などの開発事業を行う場合は、遺跡の記録を残し、国民の共有財産として公開するなどして活用に努める必要があります」と文化財保護法にも記されています。(文化庁HP

遺跡の記録を残すことを記録保存と言いますが、過去に行われてきた発掘調査については、“報告書”にまとまっており、図書館などで私たち一般人も閲覧することが可能なようです。私もこれまでの調査報告書をいくつか見させてもらいました。その報告書を作成するにあたって必要になってくるのが、調査現場の写真や図面であり、そのために発掘現場をお掃除してきれいな状態にし、写真撮影を行い、図面作成のために測量する、と言うことです。

お掃除

まず最初はお掃除について。「そこまでで大丈夫です」と言うところまで掘り作業をした後は、お掃除に取り掛かります。


ベテランさんがものの数分で作ってくださった手作り箒

報告書に載せる写真は基本的に白黒なようですが、風で飛んできた砂や土、落ち葉や木の根、など余分なものが写真に入り込まないように、綺麗に掃除をしていきます。今回の発掘現場は竹の根だらけでした。竹の根は細く人間の毛細血管のようにあちこちに伸びているので、それを根切りバサミで切ったり、落ち葉を払ったりしていきます。

発掘作業のバイト期間中、いくつか心に残っている言葉や私の中で勝手に名言だとしている言葉があるのですが、その1つがお掃除中のアルバイトさんの一言です。

「掘り作業がやっぱり花形ばい!!」

掘る作業(&根っこを鋸で切る作業)は体力を消耗しますし、掘り上げた土の量でそれなりに進み具合がわかります。また、どの根を切ってどう掘り進めていくか、頭を使いながらの作業でもあります。それに比べお掃除は、細かな木の根を切ったり余計な土や落ち葉を落としていくのですが、身体を大きく動かすこともなく、朝夕は結構冷え、土と向かい合って黙々と進めていかなければなりません。掘り作業は確かに花形なのです(笑)。

(その名言を放った方は、私と同じく今回の調査が初めてで、また山登りを何十年もされていると言う方だったので、お掃除しながら毎日山の話ばかりしていました。)

撮影

次に、撮影について。大体、お掃除の直後に行われます。今回の撮影方法は2パターンあり、1つは職員さんのカメラで。

撮影前は、その辺りをむやみやたらに触ったり、歩いたりしないようにします。そうしてしまうと、土の表面の色が変わってしまうからです。

また、撮影時は陽の角度も重要になってきます。場合によっては私たちの身体やコンパネを使って影を作り、撮影します。発掘調査のどの作業でも言えることですが、特別な道具はなく、原始的な(笑)方法で物事を進めていくことが多いです。

「みなさん、そこがちょうどいいです!止まっててください!」

もう1つの撮影方法は空撮。今回はヘリコプターとドローンからの撮影がありました。ヘリコプターは(大分空港から!)、円をかくように発掘現場の上空をぐるぐると周りながら撮影していました。

今回はこれらの方法で写真に残しましたが、他にもバルーンを使っての撮影(バルーンにカメラをぶら下げて上空から撮影)をしたり、平地であれば、やぐらから撮影したりするそうです。

測量

最後は測量。私は実際に測量はしておらず、掘り作業やお掃除中に何とな〜く隣から見ていただけなのですが(よってここには詳しくは書けません)、とても大変そうでした・・・!

記録に残すために、遺構を真上から見た図=平面図や、断面から見た図=断面図、真横から見た図=立面図を作成していきます。使う道具はレベルやバカ棒、方眼用紙。

再現できるレベルで記録に残すために、遺構の高低差や、表面から地山までの間に何種類の層が重なっているのか土層の様子など、隅から隅まで計測していきます。

遺跡を調査し保存する過程で、考古学以外の地質学や測量に関する知識が必要だとは、考えてもみなかったので、この緻密な作業を全て手作業で行なっているのを見た時には、ただただ驚きました。

例えば、土層断面図を見せてもらった時。表面から地山まで10以上の層が重なっている、と職員さんがおっしゃっていたので、どれどれと、実際に図面を取った場所を見てみました。しかし、素人の目には片手で数える程度の層しかわかりません。色が違う、なんとなく粘土質っぽそう、その程度です。図面を照らし合わせながら、ここがこの層、こっちは別の層、と教えてもらっても、?。到底、1度の調査では覚えることはできません。奥が深そうです・・・。

今回の調査で測量を実際に行ったのは、メンバーの約半分。測量をしている間、残されたメンバーは他の場所を掘ったり、お掃除をしたりしますが、それでも時間は余るので1〜2週間ほどお休みとなりました。測量が終わった後は、埋め戻しをすると言うことで、それまで集合がかかるのを待つのみです。

 

以上、今回は【お掃除、撮影、測量】についてでした。次回は埋め戻しについて。それでは、また!

 

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