【 道具洗い、道具磨き】発掘調査員日記⑦

発掘調査の仕事内容を時系列に沿って綴っている発掘調査員日記。第7回である今回は、現場作業を終えた後まず最初に行う、現場撤収、道具の片付けについての話です。おまけ的な感じで最後に、発掘調査員の1日の流れも書いています。これまでの記事はこちら

現場撤収

12月から始まった発掘調査。約2ヶ月かけて、掘削、撮影、測量等の現場作業を行いました。測量に関しては、職員さん、ベテランさん中心に進める作業で、経験と知識がなければ難しいため、私たちアルバイトは1、2週間ほどお休み。休みが明けたら、埋め戻し作業、そして現場の撤収作業です。

現場には私たちのベースキャンプとなるテントを張っていましたが、皆で片付けてトラックの荷台へ積んでいきます。

テントの中。コンテナがテーブル代わりです

見ての通り、年季の入ったテント。1月の中頃、雨風がひどかった時にテントが倒れ、数m風で飛ばされていたこともありました。その時は骨組みが曲がってしまったので、使っていない脚と交換し、おもりと杭で固定。そんな私たちの家であるテントともお別れです。

現場を離れて山奥の秘密基地へ

現場撤収後は、場所を移して道具の片付け。現場から車に揺られ到着したのは、山の麓にある建物。昔、ダム建設時に使われていた事務所だそうです。今は公民館やボーイスカウト主催のキャンプで子どもたちが寝泊まりするようですが、普段は人が入るような場所ではありません。

(この建物の付近は、登山するときに通る道でいつも気になっていたので、個人的には謎が解決されてすっきりしました。)

広い駐車場を贅沢に使ってテントやブルーシートを乾かし、遺物は建物の中へ、道具は建物の外に並べます。

道具洗い・道具磨き

使った道具は、土まみれ。竹や木の根を切り尽くした鋸は刃が丸くなり、土を1m近く掘り続けていた手がきや手ぐわは物によっては欠けています。多くは新品でしたが、1、2ヶ月で道具もくたびれ果てた様子。また次の調査でも気持ちよく使えるように、全て洗い磨き上げていきます。

洗う時は、あの青いテーブルとして使っていたコンテナ4つに水をため、1つ目のコンテナでザザっと洗い、2つ目で丁寧に濯ぎ、3、4つ目でさらに汚れを落としていきます。洗い終えた後は、日光に当てて乾かします。

乾く間、職員さん「では、しばらくぼ〜っとしていてください」

皆「・・・?!はい〜」

乾かなければ次の作業に移ることができないので、皆でお墓や葬式の話で盛り上がり(?)ました。


掘り道具の他、ハシゴや測量時に使うスケールなども洗って乾かします(中央右)

乾いたら、ベテランさんが火花を散らしながら電動のグラインダー(研磨機)で手がきや手ぐわを研ぎ、私たちは全てに油を塗っていきます。あまり詳しくないのですが・・・車などに使うような油を使いました。

そうそう、事前に、「“山奥の秘密基地”では、お湯は出ないので洗う作業の時に必要だったら手袋を持ってきておいてください」と言われていました。掘り作業で使っている農作業用の手袋の他、テムレスとゴム手袋を準備していたのですが、とても役に立ちました。

発掘調査員の1日の流れ

そういえば、発掘調査期間中の1日の仕事の流れを書いてなかったので、忘れないうちに書いておきたいと思います。もちろん例外もありますが、こんな風です。

9:00 勤務開始
10:00 休憩!
10:30 作業再開
12:00 お昼休憩
13:00 作業再開
15:00 休憩!
15:30 作業再開
16:15 片付け
16:45 解散!

掘り作業が続く時は、さらに細かく10分、15分休憩が挟まれたり、上のように道具が乾くのを待つ間ぼ〜っとする時間が挟まれたり、この通りでない日もありますが、大体、午前と午後に長めの休憩、お昼時に昼休憩、そのような流れです。

外作業の場合はお天気次第なので雨予報の日や雨の翌日はお休みになることもあります。特に今回のような坂の多い場所での掘削作業は、安全面を考慮し現場が濡れている状態の日は無理して出勤はしません。雨の日は家でゆっくりしたい人間なので、これは助かりました。ちなみに、雨ではなく雪の場合は出勤です。

そう言えば丁度この頃、職員さんが分かりやすいから読んでみたい方はぜひ、と漫画で発掘調査について説明されている三田市の「発掘調査ってなあに?」(うろ覚えですが、そんなタイトルでした)という冊子を貸してくださいました。その冊子にも、1日の作業の流れが書いてありましたが、上に書いたものと同じ流れでした。

発行されたのは20年以上前だったような気がします。今は発行されているのか分かりませんが当時は100円足らずで販売されていたようです。1冊あたりのページ数はそんなに多くなく、シリーズになっていて、この発掘調査員日記に書いているような調査の流れや、歴史的な話、縄文時代〜弥生時代の暮らしや土器の作り方などなどがユーモアある登場人物と共に描かれていました。これを書くにあたって検索してみましたが、見当たらず・・・。あの冊子、欲しいなあ・・・。

さてさて、独り言はこの辺にして。次回はいよいよ土器洗いについての話です!それでは、また!

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