樹齢約600年。満開のエドヒガン・虎尾桜へ

毎年この時期になると、一度見てみたいな〜と思いつつも、なかなか花期とお天気と気分(これ1番重要)、諸々のタイミングが合わず逃していた虎尾桜。今年こそはと思い、お天気の良いハイキング日和な午後、山には登らず桜だけ見に行ってきました。

虎尾桜へ

上野越登山口

福岡県の福智山中腹にある虎尾桜(トラオザクラ)。最も近いルートは、上野越登山口からで、徒歩約30分。福智山や鷹取山へ向かうルートを20分ほど行き、途中道を逸れるように橋を渡り、さらに進むと、樹齢約600年というエドヒガンの虎尾桜が現れます。標高は400mほどで、下界からも満開の頃はよく見えるとのこと(ですが、山桜が点々とあるのでどれが虎尾桜なのか私には見分けがつきません)。

日の当たり方がちょうどいいのは夕方という話を聞いたのと、30分で登れるなら写真を撮りながらゆっくり歩いても1時間半程度だろう、と今日ものんびり14時頃にスタート。降りてくる人ばかりで山に入っていく人はほとんどいません。

 

虎尾桜へ

歩き始めると、可愛らしいこんなものを見つけました。

さらにいくと、以前の鷹取山の記事にも載せたと思いますが登山道沿いにある大きな根「努根状」

広々とした山頂、5月の鷹取山
福岡県の100名山である福智山、そのお隣の鷹取山へ行ってきました。山頂は広くて景色もよく、とっても満足な山行になりました。

しばらく沢沿いをいくと、右手に看板と吊り橋が出てきます。

目的の虎尾桜へは、この吊り橋を渡ります。山頂を目指す場合はここで橋を渡らず沢沿いをまっすぐ進みます。

この橋を渡った後は看板(2つ前の写真)にもある通り5分程度で到着。目的地に近づくにつれ賑やかな雰囲気になってきました。


目印が至る所にあり人通りも多いので迷うことはなさそうです

「虎尾桜600年だってね。てことは1600年?」「え、いま2022年だよ」「あ、そうか、1400年くらいかぁ〜」思わずツッコミ入れたくなるような、そんな会話がすれ違い際に聞こえてきます。

この印まで来ればあと数歩です

念願の満開・虎尾桜に到着

写真やニュースなどで映像を何度も見ていたので頭の中で大体のイメージはあったのですが、やはり百聞は一見にしかず。自分の目で見るに越したことはありません。緑生い茂る山の中、1本のエドヒガンが現れました。

肉眼で見ると、写真や動画から想像していた桜の色とは少し違いました。下界の桜は空に溶け込んでいくような白に近い、どこか寂しくも感じる淡い色だなと思うのですが、このエドヒガンは主張があるような、クローンだというソメイヨシノにはない存在感のある色。ひとつひとつの花が、空や森の木々から浮かび上がるように見えます。

午後から差し込む日差しでさらに輪郭がはっきりとしており、木は背が高いので到底手が届くような場所に花はありませんが、手のひらに乗せて花を見ているようなそんな気分になりました。

下の部分はすでに葉がつき始めています

エドヒガンは個体により咲かせる花の色が異なるそうですが、この虎尾桜は中でも濃い色だそうです。写真からイメージしていたのは濃い造花のような色でしたが、そうでもありませんでした。

名前の由来

虎の尻尾

この虎尾桜、名前の由来は、伸びる枝の姿を虎の尻尾に見立てたそうです。樹齢は約600年と見られており、こちらの看板にある通り、県下最大であり最古である桜の木だそうです。

彼岸の頃に咲く桜

樹種はエドヒガンと言いますが、これの由来は、江戸で彼岸の頃に咲く花、ということだそうです。エド・ヒガンなのか、エドヒ・ガンなのか、よくわかっていなかったので(汗)、漢字を知ってスッキリしました。

ソメイヨシノの片親

桜といえばソメイヨシノを思い浮かべる方が多いかと思いますが、そのソメイヨシノは江戸時代の植木職人さんの手から生まれた種で、親はエドヒガンとオオシマザクラだそうです。桜の基本種はもともと10程度で、自然的または人為的に掛け合わせられ、今では300以上種類があるとか。

蘇った虎尾桜

この虎尾桜、一時は幹が腐朽し倒木の危機に。地元民による、「虎尾桜を心配する世話人会」と樹木医により蘇ったそうです。世話人会の方々により、桜はじめ、福智山のあちらこちらに看板が立てられています。心配する世話人会ってネーミング、良いですよね。

治療は平成13年、平成27年、2回行われたそうで、写真にあるような支柱やワイヤーを設置したり、根の周りの岩などの除去、土壌改善など様々な処置をされ、満開は隔年だった虎尾桜も毎年満開になるまでに蘇りました。


 

行ってみて

ずっと気になっていた、虎尾桜。実際に行ってみて、前にも述べたとおり、百聞は一見にしかず、これにつきます。写真や映像で見るのも良いですが、その日の天気や日の当たり方によって見え方はまた変わりますし、周りの木々と共存する桜の木の力強さは、やはり木の下に行かないとわかりません。

実を言うと行くまでは、写真で十分かな、と思ったりもしてたんです。いやぁ、行ってよかった。

今や小さいお友達であるスマホがあるので足を運ばなくとも行った気分になれる時代。遠い国のなんとか言う町の美味しいものもポチッと買うことができる。

そんな時代だからこそ、足が動くかぎりは鞭打ちながら歩いて、いろんなものを自分の目で見に行きたい。歳をとっているのかそういう気持ちが消えつつありましたが、この虎尾桜はそれを蘇らせてくれました。

山の中に入って聞こえてくる鳥の鳴き声、葉の揺れる音にビクッとしたり、雨の後の土の匂いとか、そういうの、良いです。山の中にいると、視覚、聴覚、嗅覚からはもちろん見えない何かからエネルギーを得られる気がするのです。

ブログを始めてから細く長く続いているこの登山記。もう書くのはやめて、過去の分も消そうかなと思っていましたが、こういうどうでも良いような些細な話が残っていたりするので、これからも細々と続けようと思います。

やれ、今回も長くなりました。最後までお読みいただきありがとうございました。

✏︎2022.4.7

 

参考図書
▶︎樹木医の足跡をたどるー福岡県樹木医の30年
▶︎ 貫・福智山地の自然と植物

COMMENT

タイトルとURLをコピーしました