【85日目】飛ばされたテント

朝の掃除時間、漫画のような出来事が目の前で起こった。

天気が良いなあ〜風強いな〜と、窓から富士山の方角を見ていると、テント泊のお客さん2人が視界に入った。2人は、ザックに荷物を詰めているのだろう、出発の準備をしていた。目を離している隙に、テントがふわ〜っと安曇野側の谷に落ちていった。小さい頃、もらった風船が手から離れて急にブワっと感情が溢れてくるような、あんな気分になった。掃除をしているどころではい。

あるはずのテントがなくなっていることに気づいた1人は、慌てて谷を覗き込む。見つかったとしても取りに行く手段はないのは分かりきったことである。それでも、しばらくあたりを見渡していた。小屋の2階の窓から私はその男性を見守った。「あーーーーー・・・・・。あぁ・・・」

それだけでは終わらなかった。風は止まることなく快晴の空の下、ビュンビュンと冷たく鋭い音を立てて吹いている。次は、そばにあったフライシートが飛び始めた。テントを追うようにして、あれよあれよと落ちていったのである。「あっちゃーーーーー・・・・・」

しばらくすると、私1人で掃除していた部屋に、ほかのスタッフが入ってきたので、テン場にいるお客さんのね・・・、と教えた。そのスタッフも口を開けて外を見て、一言。「あーーーーー・・・・・」

その2人のお客さんは、その後、今夜の小屋泊の受付をしているようだった。受付をしていた支配人には、私が見た出来事を伝えておいた。

とりあえず、まずは小屋であったかい飲み物でも飲んでほしい、と思った。

ストーブから離れられない今日この頃。山の上にマイナスがやってくる・・・

 

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