【休暇1日目と2•3日目】思わず声がもれる景色、そして昼寝

上山してから1回目の休暇まで約2ヶ月近く働き通しだったわけだが、1回目の休暇で休むことを知ってしまうと、次はまだかまだかと待ちきれない自分がおり、この数週間心の中でいつ始まるか分からない休暇までカウントダウンしていた。

今日から待ちに待った2回目の休暇だ。

5:30、日の出の時間に自然と目が覚めた。天気が良ければ小屋の周りを散歩しよう、雨なら小屋の中でのんびり過ごそうと考えていた。予報を確認すると、台風の影響もあり今日の午後から崩れそうなので、天気の良い今のうちに小屋の周りをウロウロすることにした。

夕方には帰ってくるつもりだったので、最低限の荷物とiPad(絵を描くため)、自分で握ったおにぎり、カップラーメン、スタッフ用にストックしてある今川焼きをザックに詰めた。

誰かと待ち合わせしているわけでも、下界のバスの時間に追われるわけでもない。山の上で自由に過ごせる時間は贅沢だ。台風が来るとはいえ、少なくとも今は晴れている。

支配人に、今日は周辺を散歩してきます、夕方に戻りますと伝え、小屋を出発した。休 暇が2日間なのか3日間なのかも確認しておく。3日間休んで良いとのことだ。

(((よし!!!!!)))

軽い足取りで外に出ると、これぞ秋晴れ!と言わんばかりの青空が広がる。軽い足取りと書いたが、実は前回の休暇後から何故か踵の上のあたりが痛く、これまで4年ほど履いてきたgoroの靴で歩けないまでになっていた。5年目にして靴擦れだろうか?今日の散歩はコロンビアのスニーカーでいくことにした。小屋閉めまでには治っているだろうと思ってはいるが、ここ最近の小さな不安の1つである。

歩き始めてすぐに目にしたのは、平らな分厚い雲海だった。思わず声がもれる。山小屋で生活していれば、初めて山に行った時のような感動は薄れていくんだろうか、と思ったことがあったが、そんなことは全くない。同じ山、同じ道かもしれないが、それらを取り巻く自然は毎日絶えず変化している。

まずは、牛首展望台にいくことにした。写真のてっぺんが、展望台だ。

ここを登らずに、まっすぐ歩いていけば槍ヶ岳へとつながる。槍ヶ岳より手前の西岳にも時間があれば行こうかな。いや、せっかくの自由な時間、この後どこにいくか、何をするか、何時に戻るのか決めるのはよしておこう。

登りは想像通り急でしんどかった。急ぐ必要もないのでゆっくり自分のペースで登る。

写真の左下に写り込んでいる看板の通り、展望台から先に道はない

てっぺんまで来ると雲海は目の前にあった。小屋から見るよりも、槍ヶ岳がうんと近い。

振り返ると、今来た道がくっきりと浮き出ている。見慣れているはずの景色だが、角度が変わるとまるで違う世界だ。改めて見ると、こんな高所で、山奥で、生活していること、生活できることが不思議だ。

足元に目をやると、紅葉しないハイマツとウラシマツヅジの赤がクリスマスカラーのようで、展望台付近は賑やかだった。

展望台でのんびりした後は、槍ヶ岳方面への分岐あたりでちょうど良い岩を見つけたのでカップラーメンを食べたり、絵を描いたりして過ごした。次第に眠くなり、昼寝を挟む。

雲は安曇野側からいつも上がって来るのだが、この日も同じだった。紅葉した高山植物を観察しながら、岩場が続く巻道を歩いた。

お守り!


細かく小さい葉にフワフワの頭、おしゃれさん。チングルマの秋の姿もまた可愛い

小屋からは見えない角度にある谷底や、目の前に迫ってくる山々。写真も撮りたいし、何も考えずに眺めてもいたい。なかなか前に進むことができない。


器用に岩の間に立っているのは岳樺だ

ウラシマツヅジを黙々と見たのは初めてかもしれない。本当に赤い


途中鎖がかかっている箇所があったが、個人的には楽しめる程度の鎖場だった

小屋のスタッフの何人かは、この巻道を1、2時間の休憩中に歩いて(走って)トレーニングしているようだ。それを聞いてから興味はあったが、今回実際に歩いてみて、限られた休憩時間に歩くのは、私には酷でしかないと確信した。体力・ペースの問題と、高山植物や景色の写真が撮りたくなってしまうからだ。

コースタイムの何倍もの時間をかけて小屋に戻る頃、辺りは真っ白になっていた。台風が来る日に、わざわざ山に登ってくる登山客はいない。あと少し、と言うところで視界の中で何かが動く。1つではない、複数のものが動いている。

目の前には、サルの集団が行ったり来たりしていた。驚いて固まってしまった。

数年前に上高地でサルと目を合わせてしまったがために、サルからのリンチにあったことがあったからだ。その時は数匹に囲まれ、ボスザルが二本足で立ち上がり歯を剥きだしていた。あれ以来サルを見るとびくついてしまうのだ。

今回は絶対に目を合わすまいと、遠くを見たり足元を見たりを繰り返しながら、サルが谷に降りていくのを心の中で祈った。なかなか道を開けてくれず、時間はかかったが、無事天気が悪化する前に小屋に戻った。

こうして休暇1日目を終えた。

2日目、3日目は台風だったので、外に出ることなく小屋の中で絵を描いたり写真を整理したりしてのんびり過ごした。

 

 

 

 

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