朝、オフィスに向かい体重と荷物の重さを確認。ふたつのザックがパンパンですし、曇り空で少し肌寒いのでたくさん着込んで、登山靴を履いたまま体重計にのります(靴のまま体重計にのるのはかなり抵抗がありました)。数字を見ると日本での山小屋生活で体重が落ちてから、キープできている模様。
その後はバンに乗り込んでパドックへ出発。私と同じ期間ウィークオフだったブリッジ始め、F小屋のスタッフもいます。
起きてすぐにサンドイッチを作りながら、立ったまま朝食を口に押し込むように食べたからか、私は直ぐに車に酔い始めます。空腹のままでも車酔いすることは分かっていたので、何か食べておこうと思ったのですが、よく噛まず、雑に食べてしまったのが原因、、、途中のトイレ休憩ではしんどくてトイレに篭りました。それも、男性用のトイレに。
パドックまでの道のりは景色が最高ではありますが、カーブは多いし舗装されていない道もありますし、車酔いする人には最高とは言い難いです。体の調子が良い時は何ともありませんが、食後すぐ、空腹時、寝不足の日などは要注意です。
パドックについてからは、自分たちの番が回ってくるのを待つのみ。まずは、リサプライの荷物が入れられたケージの運搬。次にF小屋のスタッフ。そして次は私たちM小屋のスタッフ、と思いきやここでかなり待つことに。この待ち時間も勤務時間に入っているのですが、まぁ、待ち長いです。
ヘリには、私とブリッジ、フローターのオリビアの他、他のトラックで働くロジャーも乗り込みました。パイロットが全員のシートベルトを確認するとヘッドホンについたマイク越しに、今日は寄り道するよ、と一言。ロジャーをGトラックにある小屋に送り、その後私たちのM小屋に飛ぶとのことです。そのことをヘリコプターの中で知った私は、嬉しくて嬉しくてたまりません。キラキラモード。誰よりもヘリコプターでの通勤に興奮していると思います。
ふわんと浮いた機体は、大きく円を描くようにしていつもとは違う山と山の間へすーっと吸い込まれていきます。手元に地図が欲しい。この山と山の間をすり抜けて、谷間に流れる川の名前はこれでと、一つ一つ指差し確認をしたくなります。森林限界を超えた山肌は、雪が溶け始め、つるんとした岩が剥き出ており、そこにはシルクのようにつたう滝が大小あちらこちらあります。森林限界より標高が下がると、滝は、実際は聞こえはしませんがゴォォ!と音を立ててくるのが聞こえてきそうです。シルクの滝とは比べられない水量で滝壺に水が落ちています。あの滝も、この滝も、あの川も、この川も。あの小さく見える水たまりのような湖、池も。人間が足を踏み入れることはないような場所にあり、飛行機よりも低く飛ぶヘリコプターから手に取るように見ることができて、私は心から幸せだと、飛びながら感動の連続です。




5分以上は飛んだ頃でしょうか、ロジャーの働く小屋に到着しました。この小屋はGトラックにあります。過去にGトラックを歩きましたが、私はテント泊だったので、小屋まで行きませんでした。今回ヘリの中から見る限りとてもこじんまりしており、木造の、森の中の小屋です。童話にでてきそうな雰囲気で、少しいけば湖があります。ロジャーは、ルカというもう一人の小屋番と交替でGトラック上にある2つの小屋の小屋番をしています。2人が一緒に働くことは週に数回で、それぞれの小屋に一人で過ごしているということです。


こんな僻地に一人で住めるなんて夢のようなので、その仕事をやりたい!!!と思い何度もオフィスのマネージャーには気持ちを伝えていますが、ビザの関係上それは難しいようです。時間はかかっても良いので、いつか、いつか、一人で小屋番させてもらえる日が来ないかなぁと、思っています。ネットはもちろんないですし、無線でのやり取りが基本になるでしょう。
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ロジャーがヘリから降りた後は、M小屋へ向かいます。こんな経験をさせてもらえるなんて、本当に感謝しかありません。多くの人はヘリコプターに乗るためにお金を払っているのに、私たちはこの移動時間さえ勤務時間としてカウントされてお給料が発生しています。もう、小屋での仕事が辛いなんて言ってられません。また2週間後にヘリコプターに乗ることができるのなら、私、頑張るしかないです。
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小屋に到着すると、ヘリポートには入れ違いで休みに入るアテンダンドのカップルであるエリーとルカ、そしてリリーフマネジャーのセシアが荷物を両手に持って、待ち構えています。彼らは今日から1週間のお休み。ヘリコプターの騒音で言葉を交わすことはできませんが、手を振って行ってらっしゃいと言いながら私たちは小屋の中に入ります。
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1週間小屋と仕事から切り離され、リフレッシュしてきた私は、さぁ今日からぼちぼち頑張ろうと気持ちの切り替えがうまくできた気がします。これは、日本の山小屋で働いているとなかなか感じられません。小屋によりけりですが、休みが少なかったり、連続での休暇ではなかったりするので、どうしても仕事から完全に自分を切り離すということが物理的にも精神的にも難しいのです。でも、この切り替えはきっと共同生活、隔離された場所での生活をしながらの仕事には、あるべきではないでしょうか。
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小屋に戻った後は洗濯をし、夜のディナーサービスはきっちりと働きます。私はDシフト、食洗機係です。食洗機の前に立つのは好きなので、働いているという感覚はあまりありません。
無心で洗い物をしていると、さやか、ちょっと来てくれる?とマネージャーのリン。今日のお客さんには日本人のグループ9人がおり、到着時の案内を日本語でしました。食後に何人かと乾燥室ですれ違ったのでお話ししてみると、九州からいらしたそうで、私と同じく福岡からのお客さんもいらっしゃいました。おばちゃまたちの九州の方言や訛り、しっかり浴びさせてもらい、何だかホッとした夜になりました。

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