35日目〜43日目 疲弊

10日分近くの日記をまとめて書くなんて、山小屋日記としては初めてかもしれません。いや、そんなこと、ないか?くたびれ果てて、毎日記録を書く気力はゼロどころかマイナス。疲れから風邪まで引いてしまい、体が追いついていません。

ローテーションとしては今回2回目の15連勤。1回目の連勤の時よりも、慣れを感じ休憩を取る時間も無事取れていると、ここ数日書いていましたが、あれからスムーズに進むことなく、疲れは溜まりに溜まり、、、。焦りやストレスを感じながらだからか、缶で指を切るという事件も発生。1センチ程度ですが、結構深く切ってしまい血は止まらず、採血が嫌いで毎回健康診断では魂が抜かれると皆に嘆く私なのですが、今回の怪我はpass outするかと思いました。マネジャーのリンが看護師さんのように隣で見守ってくれたのでかなり心強かったです。

▲切って数日経った傷です(涙)

怪我をした後は山の中で気温がかなり下がったからか、風邪をひきました。喉の痛みと鼻水は数日続き、体がだるい中、私の代わりはいませんので毎日料理。私は自分でこの山小屋、この仕事を選んで来ましたが、1カ月ばかしやってみて、このシフトの組まれ方、人員配置、労働時間は、よろしくない気がします。私の力不足というのとあるかもしれませんが、それを補うために長時間働き、疲れ、体が弱り、風邪をひいてしまって、代わりはおらず、追い詰められた状態でさらに頑張り、、、というの負のループ。一方、これまでの先輩たちがやって来たということは不可能ではないということ。んなら、私にできないはずがないとも思います。

さて、そのほかこの10日間近くで起きたことをいくつか。

日本人ガイド

35日目には日本人の団体がくると、お客さんのリストをみてリンが教えてくれていました。その日のガイドのまみさんによると「今日のお客さんの中にいるAさんは、ガイドえりさんの知り合いみたいだよ〜。さやかちゃん会ったことあるかな?ラウンジにいるみたいだから声かけてみて!」とのこと。えりさんとは休みですれ違いになっており、書き置きの手紙で「一緒に働いていた友達Aさんが来るはずだからよろしくね!」というようなメッセージももらっていました。

ディナーサービスのあとラウンジに行ってみるとそこにいたのはAさんとKさん。初めまして。いろいろ話していると共通の知り合いがたくさん。お二人とも国内外の山で日本人のお客さんを連れてガイドをしていらっしゃるとのこと。またすぐにどこかで会えそうな匂いのするお二人でした。

ケイシーとの再会

その翌日35日目、私が指を切った日の夜には、ケイシーと彼の新しいパートナーキャロリン2人で私たちの小屋にお客さんとして泊まりに来ました。(キャロリンは山小屋日記inNZ②に出てきている彼女です。よく読んでいただくと、え?!となるはずですが、その通り、え?!です。)

私はケイシーを、今でもchefとしてとても尊敬しているので会って話したい!と思っていました。彼が現れたのは私が1日の中で1番カリカリしているスタッフディナー直前のタイミング。シャキシュカをオーブンから出して卵を落とすタイミング。しかし、2年半ぶりの再会ですから、カリカリなんてしてられませんし、スタッフディナーそっちのけでゆっくり話したい気分でしたので、しばらく手を止めて話し込んでしまいました。

彼とは1シーズン一緒にG小屋で働きました。彼はトータルで今年が4シーズン目。私は3シーズン目。お互いこれまでG小屋しか経験していませんでしたが今シーズンは私は初M小屋、彼は初P小屋です。仕事はどう?前のシーズンはどうだった?ティナとは大変だったんじゃない?(ティナとケイシーは過去に町のレストランで一緒に働いたことがあるそうです) などなど。私からは、「1シーズン目にケイシーと一緒に働けて本当によかった。たくさん学べた。本当にありがたいしかない」と伝えておきました。彼の仕事への向き合い方や仕事の仕方は、否定するところがないのです。目から鱗なことばかり。他の人のやり方を真似てみてもやはりケイシーのやり方が結局は1番だなと最近よく思うのです。

彼はP小屋をそれはそれは気に入っているようで、G小屋よりもいいよぉとずっと言っています。それに対して私はM小屋は大変だぁ、大変だぁと伝えます。Oh shit… Oh fuck… と相槌をいただきました(笑)。いやほんと、shitにfuckなんですよ。

その日のディナーサービスの後は、キャロリン、ブリッジも加えて皆でワインを飲みながらお喋り。毎日10時間以上小屋の中で働き、顔を合わせるのは毎日同じメンバー、私含め5人だけの世界なのでこうやって外の世界から、知っている人が来ると、ホッとしますね。話せて良かった。今の私に必要でした。

ブリッジの愚痴聞き役であること

ここ最近ひどくなっているのがブリッジの愚痴。ずーっと文句ばっかり言っています。なんなら私がキッチンでかけていたジョンメイヤーの音楽にまで反応しています。「Ewww」「え、私ジョンメイヤー好きだよ、え?嫌い?なんで?」「なんでも何もないよ!Eww」

音楽の好みは置いといて、彼女の愚痴は、私にも理解できますし同じように感じています。しかし!!!!!聞き役としては正直疲れました。でも1番辛いのは彼女でしょう。ブリッジは私にだけいつ辞めると宣言していましたが、その辞める日は毎日のように二転三転。「やっぱりこの日」「いやこの日まで頑張る!」「いややっぱり無理!」私は彼女の気が変わるたびに、え?ん?えぇ!ほぅ!とリアクションをきちんととっていましたが(笑)、流石にここまでくると、好きなようにするのが1番じゃない?という気分。42日目にはまた気を変えて、「もう無理!1月の頭に辞める!明日街に出たらオフィスのマネージャーに伝える!」と。

▲愚痴会はいつも湖で。

43日目、彼女は駐車場でマネジャーに声をかけ、辞めたいと直接話していました。どうだった?と後から聞くと、she wasn’t happyと。ま、それはそうでしょう。彼女の辞める理由は小屋での小さなストレスの積み重ねの結果。それら一つ一つは小屋の中にいると疑いもなく、big problemsです。しかし小屋から出て外の世界の人(オフィスのマネジャー)に話そうとすると、大したことのない些細な出来事のように聞こえます。なんなら馬鹿馬鹿しく感じるほど。この感覚をどうやったらうまく外の人に伝えられんでしょうか?伝えることを諦めてしまっているブリッジですが、小屋として成長していくためには正確に伝えなければいけない気がします。他のスタッフの掃除が雑だとか、挨拶ができないだとか。この小さなどうでも良いことが、私たちの仕事、生活の質に直結してくるのですから。

気にかけてくれるエリー

風邪を引いた私を気にかけてくれるのはブリッジだけではありません。ツンツンしているエリーは、1ヶ月経った頃からやっと私に心を開き始めたのか、きつそうにしている私のことを心配しています。「私野菜切ったりするの下手ではないと思うから。時間ある時、キッチンきて手伝うよ」

私のよくわからないジャパニーズアクセントにも慣れてきたのでしょう。会話も以前より続くようになって来ました。彼女が野菜を15分だけでも切ってくれたおかげで、私は大助かり。本当にありがとう。ツンツンしている彼女ですが、本当は温かい人なのだと思います。私にはその温かさが100%まだ見えたないだけでしょう。

パートナービザ

そんな彼女の相方、フランス人のルイはワーホリビザで今働いているのですが、1月にexpireするとのこと。ここ一ヶ月、彼はニュージーランド人のエリーのパートナーとして、パートナービザの申請をしていました。そのビザが、無事降りたと、ある朝満面の笑みでエリーに伝えていました。「今日は良いニュースがあるよ〜う」きっちり1ヶ月で取れたようです。費用は2000ドル強。1年間有効だそうです。よかったよかった!!!

グライダー

ガイドが毎日小屋にやってくる度に、元気?最近の新しいことは何?次の休みは何するの?という、私の嫌いな会話(笑)をするのですが、隠すのも嘘をつくのも後から面倒なので、ガイド全員に毎日「次の休みはグライダーのレッスンを受けてくる!」と話します。

前回の休み中に思い切ってグライダークラブにメールを送り、ここのところ毎日やりとりをしています。金額はそれなりにしますが、ニュージーランダに来る前からやろうと決めていたことの一つです。

話す人によってリアクションは違います。グライダーのことを知らない人は私の説明では余計にはてなが頭の上にたくさん浮かび、知っている人ほど驚いている様子。ケイシーにも話しましたが、私以上に興奮しているような?

ブリッジは、写真撮ってもらえるのかな?動画は?撮ってもらいなよ!と私に何度も言ってきます(笑)。私としては自分の体がグライダーに乗って、自分の目で空から景色を見ることができるだけで満足です。あー!楽しみです!

Fly out

43日目は無事に小屋を出ることができました。前回は1日延長させられたので今回は無事に小屋を予定通り出ることができるかとヒヤヒヤしていました。ここ1週間日によっては天気が悪くお客さんは予定通りの行程で歩けず、街に引き返したりヘリコプターで移動したりとイレギュラーなことばかり起きていたのです。寒い日なんかは、ガイドでさえ6枚も着込むほど気温が落ち、風は強く、雪が溶けたはずの山が白くなっていました。

木曜日、43日目はお天気はそこそこ、無事にディーゼルのリサプライ、食料のリサプライが終わったあと、無線が入ります。あと2分で着くからスタッフトランスファーの準備を。

いつもより随分と早い連絡で、私は冷蔵庫の整理真っ只中、シェリーにやりかけの仕事のメモも残せていません。でも、着替えだけはしたい。部屋に戻って15秒で着替え(体感)、クロックスから靴に履き替えてヘリパッドへ。バタバタしすぎて、水筒と持ち歩いているカップを小屋に忘れてしまいました。はぁ、悲しい。

▲ヘリ移動では随分と興奮しなくなった私です

そんなこんなで、15連勤は風邪が治らないまま終わりました。次回山に入った時の日記はもう少しこまめに書けたらいいなぁ。

▲ピンクに焼ける空に浸れる余裕が欲しい

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