【1日目】緊張と不安を抱えてロッジへ

今日はいよいよ、小屋入りの日。私以外のスタッフは11月の上旬、私が長野県の森の中にある山小屋で小屋締めをしていた頃から、すでに小屋入りしていたので、私は遅れての入山です。

実際に働くのは到着してすぐからなのか、シフトはどういうふうに組まれているのか、どんな人たちが働いているのか、そして1番は、この3日間でニュージーランドの英語に全くついていけてない私が小屋で働けるのか。挙げればキリがなく、5ヶ月分の荷物を詰め込んだザックよりもはるかに重い緊張と不安を抱えて、バスに乗り込みます。食欲もないし、人と話す気にもならないし、久しぶりに感じました、こういう吐きたくなるような緊張感。

今日のことを書き始める前に、ニュージーランドのトラックと山小屋のことを少し説明しておきます。

ニュージーランドにはグレートウォークと呼ばれるトラックが10?ほどあり、そのうちの1つ(1番有名なトラック)にあるトラック上の山小屋で私は今回働くことになりました。そのトラックは一方通行になっており、3つの小屋があります。私が働く小屋は1番最初の小屋です。

山小屋は、日本のそれとは違って、クイーンズタウン発着の5日間のガイド付きツアーに参加する人(最大数は50)だけが泊まることができ、1泊だけ泊まったり、連泊することは基本できません。5日間のツアーは丸っとセットで、街からのバス+ボート移動や行程中の朝昼晩の食事、全てが含まれています。

つまりは、山小屋側は、ツアーの参加者だけを受け入れているので、到着時間は歩くペースで多少ズレはあるものの、食事の時間や翌日出発する時間は皆同じ。日中はお客さんがパラパラと山小屋を訪れることもありません。

ツアーのお客さんを乗せたバスは、クイーンズタウンにある事務所を9:30に出発。既にツアーは11/17から出発日が設けられており、今日クイーンズタウンを出発して歩くお客さんは50人弱。お客さんが乗るバスに私も一緒に乗り込みます。

そうそう、そのバスが出発する15分前に、この数日バタバタと手続きしていたIRDナンバーがメールで送られてきました。ネットが繋がるギリギリのところで無事に取得できて、あぁ、よかった!!!これで給料から税金が余計に引かれることはないはずです。

景色がよく見えるようにと窓がやたら大きい大型バスは2時間半ほどかけて、クイーンズタウンから小さな街へ向かいます。ちょうどこの日のバスの運転手さんは日本人。また、小さな街にも、私の働く会社の事務所があり、そこで働いている日本人の方にも会いました。さらに!小さな街で1人の日本人ガイドと合流。3人の日本人に今日は会うことができ、山の中に入る前に日本語で(笑)話を聞けてなんだかホッとしました。

バスの運転手をされている方は、この会社は今年初めてで、ニュージーランドでのドライバー歴は7年目とのこと。小さな街の事務所で働いている方は、20年前に私と同じ小屋で働いていたそうです。ガイドの方は、ワーホリで4ヶ国行き、ニュージーランドは8年目。夏はトラックのガイド(1シーズンに5日間で歩くトラックを20本こなすそうです)、冬はスキーのインストラクター(こっちが本業)をしているそうです。フランスやカナダでもその仕事をしていたとか。3人とも、日本ではなかなか会えないような経験をされている方々です。

バスは小さな街に向かって湖沿いのくねくねとした道を走っていきます。昨日までの不安定な天気から一転、今日は雲はあるものの青空が広がり、クイーンズタウンから離れていくにつれて、人も車も建物も、人工物が少なくなっていきます。それと同時に私の心の中のざわめきも静まっていくような、そうでもないような(笑)。

小さな街に着いたのはお昼過ぎ。ここで、ランチ休憩を挟みます。クイーンズタウンに3泊していた間、自炊する元気はなく(泊まったホステルのキッチンはとても狭く常に誰かが占領しているので使いづらい)、1日に1回何か食べられれば良い方でした(笑)。おかげでお腹が空いていたので、何が食べられるのかワクワクしながらお店の中に入ります。そこに並んでいたのは、フルーツにサラダやスープ、チキンとベジタリアン用のトルティーヤ。デザートのブラウニー、コーヒーまで置いてあります!ご馳走にしか見えません。ツアー参加者が会話を楽しみながら食べる中、私はご飯に夢中。やっと野菜が食べられる、、、!

昼食の後、事務所で働いている方から、さやかさんですね?と声をかけられ「これからボートに乗ると思いますが、予約が入っているはず、はずなのでロッジのスタッフですと乗る時に伝えてくださいね。ツアー参加者が持っているボートチケットはないですからね。チケットがなくても乗れるはず、はずです。それから、ボートから降りたらトラックのスタート地点ですが、そこにバギーが出迎えが来ているはず、はずなので荷物があれば乗せてくださいね。来てなかったら~」と説明を受けます。はず、はずです。と”はず”を2回も繰り返されると、不安になる、、、!”はず”を強調しないでほしい、、、!それだけアバウトなんでしょう、、、。

ボート乗り場に到着したのは14:00ごろ。スタッフだと伝えるとすんなり乗ることができました。ボート移動は約1時間。日本人ガイドの方と少しお話をしました。この年末4年ぶりに日本に帰るとか。トラックのスタート地点に着いたのは15:00。バギー来るかな、お迎え来るかな、と、そわそわしていると向こうからロッジのスタッフ2人が、さやか~!と駆け寄ってきました。日本で言う小屋の支配人と、チリから働きに来ているスタッフです。

支配人、こちらで言うマネージャー(みんなのお母さんエミリー)は私の荷物をバギーで運んでくれ、私はチリのカタリーナと一緒に小屋へ向かいます。15分もかかりません。”苔に覆われた木々のトンネル”をおしゃべりしながら歩けばあっという間。チリのカタリーナはとっても明るくオープンで、小屋のことやスタッフのことを色々教えてくれ、一気に緊張がほぐれ不安が飛んでいきました。さっきまで吐きそうな気分でしたが、森の中を歩き始めると、自分の足でここまで来たんだ!ここで働くんだ!と実感が湧いてきます。”なんとかなりそう”が9割、”不安”が1割とポジティブ/ネガティブな気分が逆転!

トンネルを抜けると、小学校が2つは立ちそうな広い平地に出て、一気に視界は開けます。左手には湖につながる川が流れており、前方には雪に覆われた大きな山々が現れます。よく見るとそのあちこちに滝が流れています。草むらの平地に立つ小屋は森に溶け込むようなモスグリーン色で建物自体は低く、いくつか棟があり、到着するなりどこに何があるのか教えてもらいます。

あそこまで歩いていけるんだよと指さしながら教えてくれるチリのカタリーナ

スタッフは皆仕事をしていたり休憩中だったりで、すれ違うたびに挨拶をして名前を必死に覚えます。全部で私含めて12人。国籍も年齢もバラバラ。覚えるまでに時間がかかりそうです。

みんなのお母さんエミリーとチリのカタリーナが私の部屋を案内してくれました。そこでシフトについて軽く説明を受けます。「あなたにはCookをやってもらいたいの。愉快なchefケイシーが3週間後には休暇でアイルランドに帰るから、その間あなたと見習いcookロビンの2人で回せるように、経験もあるみたいだし、やってちょうだい。lodge attendantの仕事もやるけどね。まずはcookの仕事を覚えるようにね。」

んんん!!?!話が違う!出発前の記事にも書いたと思いますが、ニュージーランドの山小屋は、仕事別でポジションが設けられており、私はcookで応募しましたが、面接をした結果、lodge attendantをすることになっていました。契約書上もattendant。掃除や受付がメインの仕事です。元々cookの仕事が良かったので、キッチンで働けるなら、この話はとても嬉しい!ここは、OKというしかなさそうだったので(笑)、分かりましたと返事。

話は戻って、スタッフ部屋はというと、今日1番の驚きだったのですが、個室で、しかも広い。この広さで一人暮らしするとなると都内なら月5~6万くらいでしょうか。クローゼットも、デスクも備え付け。もちろんベットも。暖房はなく、最後に到着した私は日当たりが悪い部屋なので夜は寒そうです。

スタッフの棟は3.4つ。私の部屋がある棟には4部屋と共用のトイレ、シャワールームがあり、ポジションが上のスタッフは1人部屋だったり、部屋が広くなったりするようです。みな日中はカーテンも窓も開けっぱなしにしているので、中をチラリと見てみると、愉快なchefケイシーの部屋にはテーブルとソファにシンクまであり、ちょっとしたベランダもあります。あれでは月10万レベル、山の中の別荘です。

比べるのもなんですが、日本の山小屋の従業員部屋の環境と比較すると何倍も良いです。

一通りどこに何があるのか説明を受けた後は、1人で小屋周辺を何周かして、再確認。自分の部屋がある棟に戻るのでさえ迷子になりそうです(笑)。

途中、ふふふっとなったのはキッチンの横を通り過ぎる時。爆音でノリの良い音楽が流れています。これは日本の山小屋と同じです。2週間前まで間働いていた山小屋で賑やかな音楽を流していた料理長が、懐かしい。

その後、17:00からはスタッフのご飯の時間。アイルランド人の愉快なchefケイシーが作ってくれた豪華なご飯が机に並びます。今日2回目のご飯!!!野菜と肉が、食べられる!!!!!住み込みの仕事って本当にありがたいです。

夕食はスタッフとガイド皆で食べるのですが、会話が速くて、何が何だか、ましてや食べながらでは会話に着いていけません。ニュージーランドの英語は、日本人ガイドの方によると、早口だし訛りも聞き取りづらく、カナダやオーストラリアの英語と比べても1番苦労したと言っていました。例えば1つの単語が聞き取れず、引っかかって何を言っていたのか考えていると、話はもう2つ3つ先を進んでいる状態。私の英語力だと、一対一なら分かりますが、複数人が一気に話しているのは、手を止めて集中しないと理解ができません。今はご飯を食べたい。耳のスイッチをオフにして食事に集中。まぁ、まぁ、ぼちぼち慣れていくとします。

夕食後は、暗号にしか聞こえなくなってきたニュージーランド英語から離れたく、でも自分の部屋は寒いし日当たりが悪いので、外に出て少し歩いてみることに。愉快なchefケイシーや、他の小屋から泊まりに来ているスタッフがいたので少しお話。

そうこうしているうちにもう21:00。22:00には消灯で全ての電気が消えてしまいます。ふーっ。やっと1日が終わった。日に日に1日の長さが長くなるような。

明日のシフトは朝食準備で、6:30スタートです。愉快なchefケイシー「僕がやるのを見ているだけでいいから。Baby steps. Don’t be nervous. It’s gonna be fine, all should be done by noon. 大丈夫だからね!」

とりあえずその言葉を信じて、寝るとします。

COMMENT

タイトルとURLをコピーしました