139日目〜142日目とその後 大雨で、小屋から出られない?!

最後の4日間は、MC、キッチン掃除、P、Dというシフトでした。

小屋閉め作業

小屋閉めは、日本の山小屋だと営業終了日(宿泊者受付最終日)の後、1週間なり10日なり、スタッフが小屋に残って締め作業をします。つまり小屋の中にはお客さんはおらず小屋のスタッフだけ。日中は片付けをして小屋の中の食材そしてお酒を飲み干すよう毎晩宴が開かれます。

しかし、ニュージーランドの私の働く小屋は、昨シーズンも今シーズンも今まで通りのやり方で、お客さんがチェックアウトした日に私たちスタッフも小屋を離れなければなりません。なので、1か月以上前から着々と作業を計画的に進める必要があるのです。

昨シーズンはスタッフの数が十分にいましたし、今シーズンのようなゴタゴタもなかったので、1ヶ月とは言わず2ヶ月前頃から、”deep cleaning”と言って普段はしないような細かな部分までの掃除をリストに沿って当番でやっていたので、締め作業が計画的に進んでいました。

今シーズンはスタッフの入れ替えや、エミリーの家出(小屋出?)事件もありましたし、去年のことを知っている私からすると、小屋閉めに向けての作業は比較的ゆるりと進みました。こんなで間に合うのか?と心配になる程。けれど、マンパワーが足りませんし、ここはマネージャーであるエミリーとジェンが仕切りますので、私はそれにならって、シフト通りにこなしていくだけです。

小屋を出る日は、雨予報

心配にさせる要素はそれだけではありません。お客さんがチェックアウトをする日、つまり私たちが小屋を出る日は雨の予報が出ています。ここ、フィヨルドランドでは雨はよくあることですが、予報によるといつもの雨ではなさそうです。小屋を出た次の日には、エミリーが小屋のスタッフに希望者を募り、ヘリコプター遊覧を予定していましたが、こちらは早々に予定キャンセルとなりました。

それどころか日が近づくにつれて、雨が酷いとボートが出せず、私たちスタッフは小屋を出られないのではないかという話まで上がってきました。いやいやいやいや、それは冗談だろうと思っていましたが、エミリー「それもあり得るわ」ということです。

天気ばかりは直前にならないとわからないので、小屋を出る前日まで「明日小屋を出るつもりで全ての作業を進めましょう」ということ。街のオフィス、トラック上を歩いているガイド、それぞれの小屋のスタッフで無線のやり取りが続きます。

エミリー「早く出たいわね。もう1日いなさいなんて、冗談でしょう。なんとしてでも出るわよ!」疲れ切っているエミリーは、皆には作業の指示を淡々と出していますが、心の声は「一刻も早く小屋を出たい。解放されたい」その険しい顔にはっきりと書いてありますし、なんなら時々私にぼやいてきます。

最悪な事態は、私たちが小屋を出られないだけではなくお客さんも小屋を出発することができず、私たちの小屋にもう1泊する可能性があるということ。お客さんたちが使うシーツ類は最終日に全て洗濯しなければなりませんが、もう1泊するとなるとシーツはそのままにしておかなければなりません。他にも食材や食器のことなど、泊まる・泊まらないで、締め作業の手順が変わってきます。「予定通り小屋を出る流れで仕事は進めてちょうだい」小屋を出る日の朝、雨が降り続ける森の中。お客さんがトラックを歩き続けるのか、引き返してくるのか、引き返してきて私たちの小屋でもう1泊するのか、どうなるのか分かりません。ボートの出発時間が刻々と近づく中、エミリーの指示する声には疲れた焦りが滲み出ています。

てるてる坊主

雨予報が少しでも小雨、曇り予報に変わればと、願いを込めて私はてるてる坊主を作ることに。スタッフルームの壁にぶら下げていると、これは何?と皆が尋ねてきます。そして、今にも痺れを切らしそうなエミリーは、最終日の朝、「仕事なんていいからこの人形をたくさん作ってちょうだい!外にぶら下げるわよ!このおまじないは効くんでしょうねえ?」食い気味です。

私は、皆がせっせと片付けをしている中、エミリーに呼び出されてラウンジの隅でてるてる坊主を作ることに。ティッシュで作ったてるてる坊主を吊るすために紐を取り付ける私と、無線を片手にそれを見守るエミリー。「落ちたら不吉でしょう。しっかりとめて、しっかりぶら下げないといけませんよ!」

私はそれを、エミリーの指示で小屋の玄関付近にいくつかぶら下げます。日本人のお客さんがちょうどいたので、声をかけられ少しお話しました。

予想外の展開

結局オフィスのマネージャーたちやガイドが下した決断で、最後のグループは、最終日の朝私たちの小屋を出発して次の小屋へと向かいましたが、皆で私たちの小屋へと引き返してきて夕方のボートで私たちスタッフと街へ戻るという流れになりました。

お客さんは56kmのトラックを5日間で歩ききることなく、1泊2日で前半に当たる3分の1程度の距離を往復したということになります。

私たちはお客さんがもう1泊することは無いとわかり、バタバタしつつも小屋閉めは無事終えることができましたが、お客さんにとっては予想外の展開だったでしょう、、、。参加者の1人である日本人のカメラマンの方とボートの中でお話する機会がありましたが、雨の中の森はそれはそれは美しく、もっと時間をかけて写真を撮り歩きたかったから残念だとおっしゃっていました。

最後の夜ご飯はタイ料理

ボートは遅れることなく、時刻通りに出発。私たちスタッフと、お客さんをのせてテアナウへと向かいます。お客さんがこのように旅程通りに前に進まず後ろに引き返し、ボートで街に出るなんてことは、昨シーズン・今シーズン中では初めてです。

今シーズン最後となるボートからの景色はパッとしません。また来年もここに戻ってくるのでしょうか。私の希望通り、グリーンストーントラックで働くことができれば、もうここに戻ってくることはないのでしょうか。そんなことをちらりと考えながら、窓の外の景色を眺めます。

無事テアナウに出た後は、スタッフがいつも泊まっている宿へむかいシャワーを浴びて、皆でテアナウにあるタイ料理屋さんに集合。エミリーとジェンを含む4人は不参加でしたが、スタッフのほとんどが集まり、皆で夕食を共にします。

夕食を皆で食べるのは毎日の出来事でしたが、こうやってロッジの外で、お金を払いお酒を飲みながらそれぞれ違うメニューを注文して食べるとなると、なんだか変な気分です。「食べ終わっても皿洗いしなくていいね!」「もういっぱい飲もうかな!」

お会計を済ませた後は、外で皆で集まりハグ、ハグ、ハグ。ほとんどのメンバーが同じ宿に泊まってはいますが、翌日の出発時間がそれぞれなので皆で顔を合わせるのはこの瞬間が最後なのです。お酒が入っているせいもありますが。

私も、皆とお別れの言葉を交わします。ティナとも最後少しおしゃべりをしました。今シーズン、彼女とやり遂げ、なんともいい表せない気分です。シーズン初めはしんどいの連続でしたが、ここまでくることができました・・・。

テアナウを後にして・・・

142日目の翌日、4月10日は、私はエミリーの車でクイーンズタウンまで送ってもらいました。前からお願いしていて、足がない私を快く引き受けてくれていたのです。車の中では今シーズンの話も昨シーズンの話も、こうだった、ああだった、と2人で話します。エミリーは、もう若い子達と一緒に働ける気はしない、もう戻ってこないだろう、と言っています。半年後、私もエミリーも何をしているかわかりませんが、小屋の外に出ても面倒を見てくれるエミリーに出会えたことは私にとっては大きな出会いです。日本に帰っても連絡取り合いましょうね、来年は日本に行きますからね!と言ってお別れをしました。

チームジャパン

4月12日の夜は、日本人スタッフで集まり皆で夜ご飯。以前からたけさんと、みんなで集まれたらいいねと話していたのが実現しました。賑やかな場所だったので、一人一人とゆっくり会話できなかったのは残念ですが美味しい肉に美味しいジンジャービール、最後に小屋の外で皆で集まれてよかったです。また、会おうね!と言ってここでも皆とハグしてお別れです。

山小屋日記 in NZ ②お読みいただきありがとうございました

これにて、ニュージーランドでの山小屋生活シーズン2は終了です。山小屋日記は、誰かに何かを伝えたいというよりも、今シーズンは特に自分の記録として、そして何よりも毎日の愚痴の吐口として(笑)、書いてきました。が、やはり後半は燃え尽きてしまい日記を書かない日が多く、絞り出しながら・思い出しながらのブログとなってしまいました。

それでも、懲りずに読んでくださったみなさま、本当にありがとうございます(!!!)。

山小屋日記に続きがあるのかは私にもわかりませんが、ブログ自体は今後も更新していきますので、ぼちぼち覗きにきていただければ嬉しいです。

 

 

 

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