3月も半ばを越え、畦道に咲く花の種類が増えてきたように感じます。最近見つけたのは田んぼの中でキラッと咲くキツネノボタン(の一種のはず)。この花を見ていると、仲間である高山植物、ミヤマキンポウゲを思い出します。
・・・ということで、今回はミヤマキンポウゲについて、どうでもいいけどどうでもよくない雑学とともに紹介していきます。
ミヤマキンポウゲの特徴
ミヤマキンポウゲは、他の高山植物を抜いてスッと伸びる、背が高めの黄色く輝く花です。鮮やかな緑色の葉は上部の葉と茎葉で形が異なります。(個人的に好きな理由です。)
湿った草地を好み、夏になると鬱陶しいほど山の斜面がこの花で埋めつくされます。
黄色い花弁は晴れた日に見るとプラスチックのような光沢があり、自然界の植物でありながら、なんだかショーウインドウ越しに見る造花のようです。
この光沢の正体は、デンプン。デンプンを含む細胞層が光を反射して、花弁が輝いて見えます。
黄色の花というと、シナノキンバイやミヤマダイコンソウ等キリがなく沢山ありますが、スッと伸びた花弁に光沢のある花であれば、ミヤマキンポウゲのはず。
名前の由来
ミヤマキンポウゲは、漢字で書くと深山金鳳花。花弁の光沢により輝く姿を中国の神話に出てくる鳳凰に見立て、金鳳花というそうです。
そうそう、美しさにつられて食べてはいけません!ミヤマキンポウゲに限らず、キンポウゲ属の植物には毒が含まれています。
高山植物は、食べるのはもちろん、摘んではいけません!!!
仲間の野草
初めに少し触れましたが、下界にもキンポウゲ属に属する野草があります。キツネノボタン、ウマノアシガタ、ヒキノカサ・・・。それぞれ生き物の名前が花の名前になっています。
キツネノボタン >>> 毒があり(=狐)、牡丹の葉と同じくキツネノボタンの葉にも深く切り込みがあることから、この名前がついたようです。
ウマノアシガタ >>> 葉の形が馬の蹄に似ていることから、その名前がついたとか。実際は似ていないそうです。
ヒキノカサ >>> 湿った場所に咲く花を、蛙(ヒキ)の傘に見立てたそうです。
キンポウゲの英名
上に紹介してきた花が属する”キンポウゲ属”は、学名で言うとラナンキュラス−Ranunculus。2つのラテン語からなる単語だそうで、意味は小さい蛙。カエルと同じように湿ったところに育つためだそうです。
一般的にラナンキュラスというと、バラのように花びらがいくつも重なったボリュームのあるあの花をさします。色も赤やピンク、白、黄色、オレンジと種類が豊富で、華やかさ、美しさ、可愛らしさを備えたその姿は贈り物としても好まれます。きっと街中の花屋さんで見かけたことがある人も多いはずです。
青年ラナンキュラスの話
ラナンキュラスについて調べていると、ギリシャ神話にたどり着きました。心優しい傷心の青年のお話しです。
ラナンキュラスという青年と、親友ピグマリオンはある日、山で道に迷い、コリンヌという美しい村娘の家に泊めてもらうことになりました。ラナンキュラスとピグマリオンはコリンヌに恋をしますが、コリンヌが心奪われたのは、美青年のピグマリオン。
ラナンキュラスは自分の気持ちを表に出すことなく、ふたりの結婚を祝福します。そして黙って姿を消しシシリー島に渡ります。
そんなラナンキュラスの身を案じたピグマリオンはシシリー島に向かいますが、既にラナンキュラスは亡くなっていました。見つけたのは彼のお墓。
そしてそのお墓の傍らには、一輪の金茶色の花が咲いてきました。その花はラナンキュラスと名付けられたそうです。
ルイ9世とラナンキュラス
ギリシャ神話のほか、西アジア、中近東、ヨーロッパ南東部原産のラナンキュラスをヨーロッパに持ち込んだのは、フランス王ルイ9世という逸話がありました。
十字軍として聖地エルサレム奪回のために中東に遠征したルイ9世は、花好きの母のためにラナンキュラスを持ち帰ったそうです。
ギリシャ神話の親友を想う青年、ルイ9世の母への想い、それぞれをラナンキュラスの姿と重ねると、花の美しさが一層増すような気がします。
もう一つの名前
英名ではバターカップ−Buttercupとも知られるキンポウゲ。花を顎の下に持っていき、顎が黄色く反射すればバターが好きという遊びがあるそうです。日本ではあまり馴染みがありませんね(汗)
また、dear、sweetheart、のような意味合いで男性が女性に呼びかける際に使うそうです。映画なんかで聞いたことありますか?
バターカップといえばトイストーリーやパワフルガールズに出てくるキャラクターの名前でもありますね。バターカップには元気な女の子という意味もあります。
ミヤマキンポウゲ
今回も話が飛びに飛びましたが、最後に基本的な情報を載せておきます。
ミヤマキンポウゲ・深山金鳳花/キンポウゲ科キンポウゲ属
キンポウゲ属に属するのは世界に約400種、日本には20種が自生。ミヤマキンポウゲは、本州中部地方以北に分布し、亜高山帯〜高山帯の湿った草地に生える多年草。高さ10〜50cm。花期は7〜8月。コミヤマキンポウゲ(小型で花が1.2個)、ケナシミヤマキンポウゲ(茎がほとんど無毛)、ヤエミヤマキンポウゲ(八重咲き)、他、分布場所によりクモマキンポウゲ、キタダケキンポウゲ、ヤツガタケキンポウゲなどがある。
スッと伸びた花弁に光沢のある花、ね!
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