空と雲の間がかっと赤くなり、時が止まったような、時が早送りされていくような、時の感覚が研ぎすまされるような、何がなんだかわからなくなるこの時間。私にとっては、全てがリセットされる、山にきてよかったと思う時間。
大天荘〜横通岳
2日目、4:00頃起床。小屋の朝ご飯の時間を待ってしまうと出発が押してしまうため、お弁当を受け取り小屋の中で食べて出発。お弁当は鮨飯がびっしりつまっていて、これまた十分すぎるほど。小屋では手に入れたばかりの保温ボトルにお湯を入れてもらい、登山靴のひもを縛ったら準備完了。太陽が顔を出す前、空の色がじわりじわりと変わっていきます。小屋の外のベンチで写真を撮っていたら、1人また1人と小屋から朝日を見ようと人が集まってきました。私たちは、先が長いので太陽が顔を出すのを待たずに先に進むことに。
前日の夕食の時間、小屋の方が言っていたのでそれだけは覚えています。「この時期は浅間山の左から日が昇ります」あれが浅間山か・・・。もっと遠いと思っていた浅間山が近くに見えて、人間って小さいなと改めて思います。
日が昇る西側に人がたくさんいましたが、反対の東側、ピンクの空に浮かぶ満月と北アルプス、それはもう美しくて言葉では表せません。写真は槍ヶ岳。
太陽が浅間山から顔を出した後は、空が一気に明るくなり、青くなります。目の前には富士山もはっきりと見えました。
右手の穂高連峰は私たちが南に進むにつれてよ〜く覗き込める角度に。山を始めるきっかけとなった涸沢カールも、そこにある小屋・涸沢ヒュッテも見えます。3年前に登った奥穂高岳、今山頂にいる人たちはどんな景色を見ているんだろう。
大天荘から常念小屋への道は歩きやすくて、整備してくれた人に感謝しかありません。
途中、横通岳が左手に現れます。せっかくならと登ってみると、三角点だけありました。ザレ場の道を登り始めたときは、なんで登っちゃったのか・・・と後悔しましたが、山頂からの景色はやっぱり最高だったので、次回来たときもまた上に登ってしまう気がします。
この辺りだったか、昨日はよく見えなかった安曇野のまちが見えました。
その後は、これから登る常念岳を目に焼き付けて一旦木々の中に入り、一気に下ります。
しばらくハイマツしか見ていなかったので自分の背丈より高い木の中を歩くのは、それはそれは新鮮でした。(この辺りから、カメラの充電がきれそうだったので写真の枚数が減ります。)
常念小屋〜常念岳〜常念小屋
常念小屋から常念岳への道は、とにかくしんどかった。本当にしんどかった。何度でも言う、しんどかった。一つ前の写真を見てもわかるように、登りきった!と思ったらさらに上り坂があるように見えるので、自分はあの辺りでへばってるのが早い段階から想像できました。平標で心が折れそうになったときを思い出す。
歩いていると、後ろからどんどん人がきます。あの人も私を抜いていくんだろうな、あの人が通り過ぎたら前に進もう、あの人速そうだし待ってよう、そんなこんなで、気づいたら見える限りの人は全員私より前に行ってしまいました。
歩いていると何度もすれ違う人が3人ほど。
「あ、おつかれさまです〜」
「おつかれさま、ここが山頂でいいんじゃないかな?」
「ここが山頂ですかね。またいつでも追い抜かしてください」
この景色を目の前に、そんな会話ばかりして全っ然進まない。
山頂の手前でそのおじさまに「いつもマイペースで歩いてて、そろそろ怒られそうですハハハ」なんて話してたら「あとちょっと〜〜〜!!!」と山頂から声が。お尻をたたかれた気分!LINEを開いたら、「登らないの?」ときていました。
山頂からの景色を楽しむ余裕もなく、体内滞在時間1分、すぐに下山開始。(私はそのとき既に2人を30分も待たせていました、すいません)
下山はなんだか気分も軽くなって、頭の中はカレー。誰よりも早く駆け下りて小屋に到着。
常念小屋〜一ノ沢
お昼ご飯はカレーと、ワイン。ではなく白ぶどうジュース。ペットボトルのジュースにしようか迷ったけれど、いつも炭酸は一口目で満足して残りをおいしく飲めないのは分かりきっているので、こちらにしました。あんなにお腹すいていたのに、最後の数口は少し苦しく感じました・・・。
水も残り少なくなっていたので1L300円の水をここで買いました。水道水から自由にどうぞ、というスタイル。とにかく団体客でにぎわっていた常念小屋、小屋の方々も忙しそうでした。
小屋の外、テン場の隣にある外来者用のトイレでトイレを済ませて、下山開始。この後は一気に森の中なので、この青空が恋しくもあります。
この下りは長かった。長いと聞いてはいたものの、とにかく長かった。一ノ沢の名前の通り沢まで下りて、沢沿いをず〜っと歩きます。登ってくる人には悪いけれど、すれ違う度に、「こっちから登ってこなくてよかった」と心の奥底から思いました。
夢でも見てるのかというくらい、進まない気がする、一ノ沢。
本当に夢だったのかもしれない・・・。
足の裏が悲鳴を上げ始めた頃、なんとか無事下山。
ここからはタクシーでしゃくなげ温泉まで向かい、温泉で足を冷やして、唐揚げ定食を平らげ、高速バスで帰宅。
2日間歩き続けて、「人間の欲」と「頭に浮かぶ言葉」は自然を目の前にすると「シンプル」だなと思いました。お腹すいた、眠たい、きれいだ、もっと歩きたい、座りたい、お腹すいた、その繰り返し。人工物と人ごみにもまれていると、あれやこれやと複雑に考えがちだけど、この2日間でリセットできた気がします。さー、次はどこに行こう・・・!
2019.10.4「アリみたい」
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