68日目〜70日目 動かないオーブンの換気扇

私たちのオーブンの優先度は低め

68日目、セシアは朝からメンテナンス担当の人、さらに上に立つマネジャー陣の1人に電話を何度も何度もかけてくれます。「さやか、何回も電話かけてるんだけどね。繋がらないよ。繋がったら、すぐにでもオーブン直してくださいってプッシュしてみるから。もう少し待って」こういう時、セシアには本当に頼ることができます。感情的にならず、パニックにもならず、誰にどう何を伝えるのが効果的なのか論理的に整理し、行動に移すことができます。「ありがとう!助かる。」

朝食サービスは問題なく終了。ファンはもちろん壊れたままですが、なんとかやりくりすることができました。ファンが壊れたのは左手のオーブンで、右手のオーブンにはそもそもファンがついていません。いつもファン付きの左手のオーブンをメインで使い、お客さんが多くどうしても必要な時だけ右手のオーブンをサブとして使ってきました。その右手のオーブンは、ファンはありませんが火力は強く、注意してさえいれば調理することは可能。放ったらかしてしまうと、すぐに焦げてしまいます。

朝食サービスの終わりかけにエリー「大丈夫そうだったね」と私に声をかけてくれます。こう思ってしまう私も私ですが、その一言がどこか上から目線で、私はイラッとしてしまいます。そもそも大丈夫かどうか決めるのは私だし、大丈夫になるように物事計算して進めてるから大丈夫だったんだよ!!!と心の中で叫びます。やれやれ。「うん、大丈夫だったね」

しばらくしてから、セシアがキッチンにやってきます。「さやか!なんだかねえ、他の小屋も大変みたいでさ。それぞれの小屋にジェネレーターが2つあるけど、2つとも動いてる小屋、こことQ小屋だけみたいだよ。他の小屋は1つしか動いてないとか、隣のF小屋は両方とも動いてないってさ。」後から聞いた話によると、隣のF小屋は朝食サービス中にジェネレーターが故障し、ヘッドランプをつけて料理をし、皿洗いをし・・・と大変だったそうです。

オーブンから爆発音がし、ファンが故障、という私たちM小屋での事件は、他の小屋に比べると優先度は低め。それならそれで、仕方ない・・・。とやっぱり思ってしまう私。それはそれ、これはこれで、ちゃんと交渉すべきだというエリー。諦めずに電話をしてくれるセシア。

ベイキングは諦める

この数日オーブンのファンは動きませんが、無事に朝食、夕食サービスを終えることができました。何度もオーブンを開け、確認しながら、時にはトレイをひっくり返して火加減を見ながら。時間がかかることはわかっているので、特に夕食サービスの準備はいつもより早めに行いました。

しかし、ベイキングに関しては壊れたオーブンで焼く自信はありません。デイツプディングにブラウニー、ビーガンスライス。この3種類を焼かなければいけません。大体2日に1回以上は何かしら焼いています。デイツプディングというのは夕食のデザートに出すスポンジケーキのようなもの。ブラウニーはお客さんが到着した時のウェルカムスナック。ビーガンスライスというのは、日本でも最近よく見るようになってきた、オーツを使ったエナジーバーのようなものです。朝食時にテーブルに紙袋と一緒に置いて、その日のハイキングのおやつとしてお客さんが持っていけるよう出しています。

私は、長時間労働になっても仕方ないかと、壊れたオーブンで在庫が切れたビーガンスライスを68日目、オーブンが壊れた日の翌日に焼こうと思っていました。しかしセシア「Don’t make your life harder. It is what it is!」と言ってくれます。つまりは、ビーガンスライスは作らなくていいということ。お客さんに出すスナックがないならないで、無理しなくていいし、時間を無駄にしなくていいよと言ってくれました。こういう思い切った判断も私にはできません。

結局、オーブンがなくなるまでは、ベイキングはせず、今あるもので対応、無くなれば無くなったでよし!ということになりました。デイツプディングに関しては、先日焼いたばかりだったのでしばらく持ちそうです。しかし、オーブンを直してもらえるのがいつになるかわかりませんので、真四角のプディングを半分の三角に切って、お客さんに出すことにします。

夏はどこへ

オーブンが壊れたこと以外のこともいくつか。リサプライを終えてこの数日は、冬が戻ってきたようなお天気。数日前は怖くなるほどの青空、半袖でないと暑くてたまらない気温でした。やっと夏が来たねえ!と言っていたのに、また曇り空、雨風、朝晩の冷たい空気が私たちの小屋に戻ってきました。セシア「ほらね、夏はもう終わりって言ったでしょ。」

寒いと飲みたくなるのはチャイ。G小屋ではよく作っていましたが、M小屋ではそんな心理的な余裕が一切なく、ほとんど作っていません。しかし、最近はやっと心にも余裕が出てきました。チャイを作ってクララに飲ませると、美味しいと言っておかわり。また気が向いたら作ろうと思います。寒い日に。

平和な時間

心に余裕ができたのは、セシアとクララ3人のお昼ご飯の時間のおかげでもあります。1日のうちで唯一平和な時間。小屋に来て数ヶ月経ちますが、私にとって必要だったのはこういう時間だったのかもしれません。いくら忙しくても仕事に追われていても、ゆっくり座って忙しさをジョークに変えて笑い合える、そんな2人です。クララはブリッジと入れ替わりでやってきたスタッフ。ちょうど1週間ほど経ちますが、仕事を覚えるのに必死。それでも休み時間に外に出てハイキングしたり、ガイドとの会話を楽しんだりと、肩の力の抜き方を知っています。

食べ物を残さない日本人

次に食べ物に関して文化の違いを。

前にも書いたかもしれませんが、日本人は出されたものは残さず食べる、自分でお皿に取ったものは綺麗に食べるということが当たり前なような気がします。しかし、この文化って日本人ならではなんだなあ、と最近、というか毎日ひしひしと感じます。よっぽど嫌いじゃない限り残さず食べませんか?でも、ここでは、嫌いなものを堂々と避けて残す、お腹いっぱいになって食べれないから捨てる。というのは恥ずかしいことでも悪いことでもないようです。スタッフディナーは各自お皿に盛るスタイルですから、残すなら最初からお皿に盛らなければいいのに!といつも思うのですが・・・。

なんでこういうことが起きるのだろうと皆がペラペラと会話をしているのを聞き流しながら考える私。勿体無いという感覚はまずない。そして嫌いでも食べるという無理をすることを叩き込まれていないのではないか、と思います。後者に関しては食べ物だけに限らず、毎日の生活においてもそうです。やりたくないことはやらない。嫌だったら口に出す。行動に移す。無理をしたり自分の中で黙って処理するようなことは、しません。

ここで、私が作ったご飯、まずかったかな?と思うのも日本人的、私的な考えなのでしょう・・・。あ、この人はお腹いっぱいだったんだな、あの人は半熟卵が嫌いなんだな。と思えたら楽なのでしょうが、せっかく皆に食べてもらうなら、皆が嫌いなものを作りたくありません。んー、きっと考えすぎなのでしょう・・・。

69日目、ジョンがやってくる

オーブンの終了は月曜日以降になると言われていましたが、69日目である土曜日、朝までG小屋でメンテナンス作業をしていたジョンがボート、車で移動し、20時過ぎに歩いて私たちのM小屋まで歩いてやってきました。彼は、私が1年目の時にはガイドとして働いていましたが、今はメンテナンス担当のスタッフの1人です。到着した時間が時間なので、何か食べますか?と皆で食べた夕食、シーフードカレーにサラダがありますよと声をかけます。食べるより先に、オーブンを覗き込んでくれるジョンは、キウイアクセントがなかなか強いです。そんな彼に、こんな音がして、こんな匂いがしてと拙い英語でオーブン爆発事件、ファンの故障について報告します。「オーブン、まだ熱いから、明日の朝ちゃんと見てみるよ。」

70日目、直ったオーブン

70日目、私はオーブンを使った仕込みができませんし、今できることをチャチャチャっと済ませて、毎週日曜日の仕事の一つである発注作業に集中します。私「オーブンもコンロもお昼の3時までは使わないので、広々、使ってください」とジョンに伝え、オーブンが直りますように!と願いながらジョンにキッチンを託します。

発注作業は以前に比べればストレスを感じないようになってきましたが、1週間分の食材の発注の責任を背負っていると考えただけでそわそわしてしまいます。何度も何度も数を確認し、冷蔵室、冷凍室、ドライストアの棚とiPad上の発注リストと睨めっこ。んー・・・眠たくてたまりません。その間、ジョンはオーブンの修理をしてくれます。

昨日からジョンの他にヘッドガイドでもあるチャーリーも私たちのM小屋に数日泊まっており、チャーリーもパソコンと向き合って仕事をしています。チャーリーは、M小屋、隣のF小屋に数泊ずつし毎日ガイドやお客さんの様子を見ながらガイドのオペレーションがうまくいっているかどうか、シーズンの折り返し地点ということもあり、自身の目を光らせて確認をしているようです。

15時を過ぎたころ、私はキッチンへ戻ります。ジョンの姿はキッチンになく、ダイニングルームに行くとランプの取り付けを行っているジョン。「オーブン、使っても大丈夫ですか?」「お!直ったよ、でもちょっと見せないといけないことがある!」

「オーブンのファンのスイッチを入れた時にファンが自分で回り始めることができなくてね。この部品が破裂して、壊れてるんだ。変わりに、この長いウッドスプーンを使って、オーブンの奥にあるファンを手動でぐいっと回せば、動くよ」壊れた部品の写真を見せてもらい、その部品が大きな破裂音の原因だったことも教えてもらいます。そして、ウッドスプーンをオーブンに突っ込んで、ファンをぐいっと回します。すぐにオーブンの扉を閉め、ファンのスイッチを入れると、お見事!ファンが動いている音がします!「ありがとうございます!!!」

これで、オーブンが使えます!今日はもう時間がありませんので、明日からベイキング、再開出来そうです!

▲直ったオーブンで早速作ったスタッフディナー、エンチラーダ

 

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