32日目 雨の日のにおい

雨だ。週末は雨予報だと、先週から覚悟していた。その通りの雨が降り、風が吹き、レインウェアを着た登山客がやってくる。

濡れた人間が暖房の入った小屋を出入りする、雨の日のにおいがする。私の部屋の前は特に、乾燥室が目の前だから臭いが強い。あぁ、そうだった。覚えている。今手にカップを持ち、部屋に入ろうとする自分は、一瞬で3年前の自分に戻り、あの時間を再体験しているかのように、記憶がちらちらと頭の中に現れる。

でも、あの時とは相部屋の相手も違えば、働くメンバーも半分違い、私自身も変わってしまった。それでもまた、いつかこの臭いを嗅ぐ日があれば、私の一部分は今日に戻ることができるのかもしれない。

そう、雨だから外には一歩も出ていない。窓から見る限り、小屋の前の春楡の木は裸だったのに、昨日からの雨で急に緑を着飾り始めた。結構なスピードだ。

休憩時間は細切れで、休み時間に休んだ気分がしない1日だった。今日は従食当番、鶏肉のトマト煮込みハンバーグに、コンソメスープを作った。もう一品、二品と作りたいところだが、なんといっても食材が限られている。明日も私が従食当番なので、明日の私のために野菜は取っておきたかったのだ。皆は、ごはんですよやなめ茸をご飯にかけ、お腹を膨らませ、食後には煎餅やお客さんから絶えることのない贅沢な手土産のお菓子をいただく。

さて、明日は何を作ろう。タンパク質となる肉魚は今日使った同じ鶏ひき肉しかない。ハンバーグの次は何を作ろうか。明日の自分がなんとかするだろう。

 

 

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