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1日目〜3日目 何もわからないまま入山

7:30、山小屋を管理している会社の方Mさんが私の宿泊しているビジネスホテルに迎えに来てくださる。その車で会社へ行き、荷物を詰め込んで、朝礼に参加、軽い挨拶をして、山奥へと向かう。Google mapでは3時間と少しと出ていたが「4時間はかかるだろうね」と。

今日から3泊、その方と、その会社と関わりのあるアロマの蒸溜をされている方Aさんの3人で小屋に泊まることになる。それ以降は私1人。本気の1人。聞くところによると、週に1回程度、1泊するお客さんが街からやってくるという。会社関連のお客さんで一般の登山客の宿泊は受け付けていない。人数もどちらかというと少ない。

小屋に到着したのはお昼過ぎ。まずはお昼にしようと、途中セブンイレブンで買ったおにぎりを食べ、一息つく。そしてシラビソの収穫に向かう。Aさんのアロマ蒸溜に使うもので、シラビソの木を見つけてはチョキンチョキンと枝を切っていく。あ、ここは国立公園ではないので違法ではない。

3日間の間は、シラビソの収穫や、今月1ヶ月間の予定の確認、隣にある工事事務所への挨拶、車で15分ほど行ったところにある蒸溜所への挨拶、さらにそこから管理道路を1時間ほどかけて上がった場所でのシラビソ収穫。などなどを行った。

管理道路の運転は、ペーパーの私には刺激が強すぎた。隣にMさんが座ってくれて教えてくださるものの、アトラクション以上の揺れだしジグザグの坂道を石ころ踏みながらグイグイ登っていく。1200mくらいある山小屋から2500mほどの見晴台まで軽トラで登りきった。降りる時なんかギアをLに入れてもDと変わらないスピードで車のタイヤが回り続ける。ブレーキの踏み過ぎで焦げ臭い。気を抜けば谷にあ〜れ〜と落ちていくような箇所ばかり、連日の雨で湧水がドボドボ湧いて、道を横切り川になっている。はぁ、本当に良い練習になった。

▲見晴台、山は雲の中

「本当は1人でいてもらう間、この道を1人で上がってしらびそをとってきて欲しかったんだけど、無理そうだね。いや、あれは男性でも無理だね」うん、無理でしょう。万が一何かあれば、連絡手段はなく、安全確認のしようがない。

小屋は、コロナ前までは登山客に向けて営業していたもので、私が2022年、2025年と働いた小屋の大きさとほとんど同じだ。設備も似ている。人の出入りが少なくなってしまっている分、使っていない部屋はカビ臭いし、あちこちに蜘蛛の巣がある。「コウモリの糞もあるんだよ」コロナ後は営業をしていなかったそうだが、清掃業者が入って掃除をされたり、うちうちでお客さんを呼んだりはしていたらしい。なので、カオス状態ではない。ネズミの死骸なんかに叫びながら掃除、なんてことはなさそうだ。このくらいの状態ならなんとか1人で掃除ができそうな気がする。それにしてもネズミがいないのは何故だろう。今まで働いた山小屋にネズミがいなかったことはない。ネズミが出ても良さそうな雰囲気なのだが、不思議でならない。(噂をすれば出てくるかもしれない)

掃除のほかに、やることリストに書かれているのは、薪割りや蒸溜所のお手伝い。そしてシラビソの収穫。これは、道路状況が良くないので、早々にやらなくていいという話になった。薪割りや蒸溜所のお手伝いというのは、いずれも小屋から15分ほどかけて蒸溜所へと運転しなければならない。道中は工事が行われているため、移動できる時間は限られている。雨が降ればすぐに道は崩れるので、何かと不便ではある。そういうこともあり、食材や備品の買い出しは、私は街まで4時間かけて降りなくて良いということになった。お客さんが来る際にスタッフの方も一緒に上がってくるのでその方に荷揚げしていただくことになる。

ということは。1ヶ月間完全に文明社会から隔離され山の中に住むことになる。初めてのことではないが、今回は多くの時間を1人で過ごすということになる点では初めての経験だ。

1人で山にいる、そんなの大丈夫だろうと、何も疑いもしなかった。ニュージーランドで働いていた会社には、1人で働ける山小屋があり、そこで働きたいとずーっと思っていた。願い叶わずだったが、今回この話をもらった時は、やっと1人で働ける!と嬉しかったのだ。

いやいや、でもちょっと待てよ。お客さんが毎日のようにくる場所で1人で働くのと、週に1回しかお客さんが来ない場所で1人で働くのは訳が違う。ここは、泊まるお客さんだけでなく、前を歩いていく登山客もほぼゼロに近い。すぐ隣に関連会社の工事事務所があり50人近くが寝泊まりしているようだが、作業員さんたちは日中はもちろん仕事をしているし、遊びに行くような雰囲気ではない。「話し相手がいないんで遊びに来ました」なんて、作業服にヘルメット、タバコをスパスパしているおっちゃんたちの輪に入れたら、どれだけ良いだろうか。

それに気づいたのは、山に入ってからである。もしかして、やらかしてしまった?なぜ山に来る前に、もうちょっと考えなかったんだろう?いや、山に入る前は運転の不安ばかりで、それ以外のことを心配する余裕すらなかった。

いよいよ、明日の早朝にMさんとAさんが降りれば私は1人になる。その2日後にはお客さんを連れてMさんが上がってくる。1人、大丈夫だろうか?

 

▲Aさんが作ってくださった朝ごはん。静岡では黒いはんぺんが普通らしい。ふわふわしていない。

 

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