Week off ③ その3 天気を待つ

今日はグライダーコース2日間の2日目。正直に書くと、昨日空を飛んでみて、酔いましたし急降下で耳が痛くなったので、今日再び飛ぶことに少し怖さがあります。しかし、もう一回乗れば何か変わるかもしれない、もう少し操縦してみたいという気持ちは少なかれ自分の中にあるので、どんな1日になるだろうとてくてく歩いてグライダークラブへ向かいます。

グライダーに興味を持ったきっかけ

今日1日の話を始める前にグライダーに興味を持ったきっかけ、以前にも書いた気がしますが、ここでももう一度書いてみます。

ちょうど4年前、発掘調査のバイトをしている時に出会ったおじさま(お元気にされてますでしょうか)、山登りが好きということで土掘りしながら山の話をよくしました。それにしてもお天気に詳しいそのおじさま。発掘調査中、お天気は常に気になります。雨が降ればすぐにブルーシートで発掘箇所を覆い、中止しなければなりません。おじさまが空を見上げて風や雲を観察していたのはよく覚えています。それにしてもなぜそんなに詳しいのだろうと思っていると、登山もされる彼は、グライダー乗りでもあるとある日教えてくれました。

グライダーのグの字も知らなかった私。話を聞いた日は家に帰ってすぐにグライダーについて調べました。体験できるからおいでよ言われましたが、タイミングが合わず、、、。それから心の隅にグライダーに乗ってみたいという気持ちは常にありました。空、飛んでみたい。

それから一年後、私はニュージーランドへワーホリビザで働きに行くことになります。ある日、働く山小屋でヘリコプターに乗るチャンスが訪れました。ミルフォードトラック上をほんの数分ですが、飛ぶことができたのです。空、飛んだ!

さらに一年後、ワークビザを取得、再び同じ山小屋で働くことになります。この年も同じ空を、数回飛ばさせてもらえることになりました。

そして二年後、時間は空きましたが2度目のワークビザを取得。今回は別のトラック上にあるM小屋で働くことになりました。(M小屋の標高は、私やそのおじさまのホームマウンテンでもある福智山の標高と同じくらいです。)しかも嬉しいことに、下界と小屋の移動は毎回ヘリコプターです。それを狙ってこの山小屋に応募したというのもありますが、何度乗っても飽きませんし浮いている感覚が、あぁ!堪りません。ヘリコプターの魅力に取り憑かれ、そしてグライダーのこともさらにさらに気になり始めます。ヘリコプターとは違う、エンジンのないグライダーで飛んだらどんな気持ちなんだろう。

このM小屋では2週間連勤、1週間の連休という働き方をします。6ヶ月のシーズン中に8回week offがあるのですが、ニュージーランドに家がない私は、毎回何をしようかと9月ごろ仕事が決まった時点でぐるぐると考えていました。稼いだお金を使わずにクイーンズタウンでダラダラ過ごすのも良いですが、せっかく休みがたくさんあるのなら、グライダーに乗れないだろうか?と調べたのが、このオマラマグライダークラブに辿り着いたきっかけです。

日本のグライダークラブもそうですが、ニュージーランドのグライダークラブのウェブサイトはイマイチパッとしていません。メールで問い合わせるしかないなぁ、どうしようかなぁ。知り合いがいるわけでもありませんし、行ったことのない町にあるクラブです。新しい世界に踏み込むには、年もとって来ましたし、勇気が必要。

ここで、最後に私の背中を一押ししてくれたのは、あまりにも忙しい山小屋での仕事と、街に出た時に安く泊まらせてもらえるホステルが騒がしかったこと、この二つです。

(私が山登りを始めた理由に似ているかもしれません)

きっと山小屋の仕事がお花畑をスキップするようにルンルンで進んでいたら、グライダーに乗ることはなかったでしょう。おかげさまで、ムキになってえいやっと、グライダークラブにメールを送ってみることができたのです。

午前中、講義

さて、今日のコースはというと、昨日と同じく10時に天気に関してのブリーフィングが行われ、インストラクターのジェームスとグライダーを格納庫から出して曳航機の離陸場所まで移動させます。

昨日は、ウインチ曳航という方法で離陸して2回のフライトを行いましたが、今日はウインチが使えないとのこと。天気のせいですか?と聞くと、担当の人がおらず、ウインチを使うことができないとのこと。ジェームス曰く、彼らはボランティアだそうです。

ウインチが使えないのなら、残された飛ぶ方法は曳航機に引っ張ってもらう、です。英語ではtow planeといい、ウインチよりも離陸に対して約3倍の費用がかかります。

(それぞれの離陸方法に関しては昨日のブログに少しだけ説明しています)

「tow planeを使うのはexpensiveだから、午後からの天気を見て、あまり長く飛べそうになかったら今日は諦めてまた次回だね。ひとまず飛べるように、あっちに移動しよう。僕が運転するから、翼を持って歩いてくれるかね。少し長い距離になるけど、何かあったら窓を開けてるからSTOPと叫ぶんだよ」

グライダーを車に引っ張ってもらう形で200mくらい移動させ、いつでも飛べるように準備をします。そのあとは車でターミナルまで移動。午前中はホワイトボードを使って、ジェームスから一対一の簡単な講義を受けます。ジェームスは私が座るや否やボードにグライダーを真横から見た図を書き始め、上下前後に加わる力について、ひとつひとつ説明してくれます。昨日、ググって少しだけ予習したので頭にすんなりと入って来ました。

まず上に働くのは揚力=lift、下は重力=weight、後ろは抗力=drag、そして前に進むのはエンジンを備えたものはエンジンですが、グライダーに関しては重力が力となって前に進んでいきます。「坂を下る自転車と同じ原理だね」「ほう」

グライダーは重力によって距離を稼いでいきますが、下からくる空気の流れがグライダーに対して角度が大きければ大きいほど、揚力が大きくなると言います。計算式は、高校の数学を思い出せるようなアルファベットの羅列です。「は、はぁ」車を走らせて風を感じるために手を窓から出したとする。手のひらを傾けたら風を受けて腕がふわんと上がるよね、それと同じだよ。「あ、あぁ!ほう。」

私が頷くとささっと絵と計算式を消すジェームス。迷いなく、次に描いたのはグライダーに座った時の景色。

座って見える景色はこうだね、右に曲がる時は景色にも角度がつく。これを戻すためにスティックは反対方向に倒さないといけない。視界の地平線とピットの幅を一定に保つのが基本だよ。「は、は、はぁ。」

普段使わない脳みそをゆっくり回転させ、なんとかジェームスの言うことを理解しようと努めます。昨日グライダーに乗って操縦する前にこの話を聞いてもちんぷんかんぷんだったでしよう。実践後に説明を聞いたので、少しは理解が進んだ気がします。

それにしても面白い。学ぶことが久しぶりに楽しいと思い出させてもらいました。使ってなかった頭、使わないと勿体無いですね。うん、勉強しよう。

昼休憩

その後は、1時間半の休憩。私は歩いて15分ほどのところにある一昨日訪れたカフェに行くことに。別のパブで食べたシーフードチャウダーが美味しかったので、このカフェではどうだろう?と試してみることに。

▲やはり具が盛りだくさん、美味しい

▲乗り物酔いには生姜ということでジンジャーレモンティーを

歩いてグライダークラブに戻りターミナルに行くと、ジェームスともう1人の教官は、卓球で遊んでいる最中。私を見るなりジェームス「天気が良くないからね、少し待ってみることにするよ。長く飛べなかったら、曳航機にお金を払っても高いだけだから、無理はしないでおこう。また別の日に飛んでも良いしね。卓球はできるかい?」

午後、天気を待つ

しばらく経った後、外で待ってみるかということで午前中にグライダーを停めた場所まで私とジェームス、昨日から参加しているデンマーク人の彼と、彼の教官4人で向かいます。うーん、今日は難しそうだと、教官たちが飛んでいるtow planeと繋がれて飛んでいるグライダーを見上げながらそういいます。今日は無理かもねえ、ということです。デンマーク人の彼とは昨日のフライトはどうだったという話を軽くしました。彼は1回の飛行で3時間も空にいたそうです。酔わないのか?!とすかさず聞くと、乗り物酔いはしないんだ、と。羨ましいったらありゃしません!!!!!!

▲長く飛べず降りてくるグライダー

とにかく広い、airfield。私が今回乗っているグライダーはドイツ製ということですが、デンマーク人が教官と乗っているグライダーは、形が異なります。ここ、違いますね!と話しかけると、ジェームスが、このグライダーは金額も上がるし、翼が長くて最新式になってるんだよ。と説明してくれます。グライダーはどのくらいまで高度を上げられるのかと聞いてみると10,000ft以上とのこと。「つまりはええっと、3300mくらいってことですか?」「That’s right.」そこを超えると酸素ボンベを使うらしく、彼らの新しいグライダーには酸素ボンベが尻尾の方に備えられ、チューブを鼻につけることができるんだと説明してもらいます。

Tow plane

今日は諦めようかという話になり、私は次回オマラマに来る事ができるのは2月ですとジェームスに伝えます。彼は3月末まではここにいるから、また一緒に飛ぼうと言ってくれます。生姜のお茶を飲み、生姜のキャンディまで食べて準備満タンだった私、少し残念ですが、まあ仕方ないかと言ったところ。またオマラマにくる言い訳もできたので良いか!

すると、デンマーク人についている教官が「せっかくだったらtow planeに乗ってみたら?どう?」と声をかけてくれます。昨日からずっと気になっていたこの蝿みたいな形のtow plane。乗ってみたいなあと思いながら見ていたので、乗りたいです!!!と即答。

ターミナルまで、車のように走らせるのかと思っていましたが、そこに居たクラブに所属する他のグライダー乗りのおじさんが少し飛びたいな、ということで、走るのではなく飛ぶ事になりました。

2人乗りのtow planeはグライダーのように前後ではなく、横並びで2席。が、とにかく狭い。パイロットにピタッとくっついて乗ります(笑)。普段は何をしているのかと聞かれ、小屋で料理しているというと、「あの会社?僕もグレノーキーからミルフォードまでのフライト飛んだりするよ。初めはグライダーの乗り方を学んで、その後にこの免許を取ったよ」と言っていました。もう少し詳しく聞きたかったですが、ひとまず翼によじ登って、窓から座席へと乗り込みます。「これは農業用に使うtow planeなんだ」

乗り物全般に対しては興味のない私ですが、空飛ぶ乗り物は別!ワクワクが止まりません。自然と笑顔になります。

エンジンがかかり、ブンブンと言わせ、加速し少し走らせた後は飛行機のようにフワンと地上に浮いて標高を上げていきます。サイドミラーからは後ろにロープで繋がれたグライダーが見えます。今回はtow planeに引っ張られてグライダーに乗る機会がなかったので、どんな感覚なんだろうと想像してみます。

実際に乗ったのは10分くらいでしょうか?

乗っている間は、グライダーよりもスムーズ、ヘリコプターに乗っているときの感覚と似ていました。キューンとカーブする時に機体が傾いて景色がくるんと回転するあの感じ、たまりません!!!もう、この機会にありがとうしかないです!!!

また明日

ターミナルに戻るとオフィスは鍵がかかっており、2日間の支払い、どうしたらいいんだろう・・・とふらふらしていると、昨日会ったエミリーが現れます。キャシーに手続きについて話したいんだけど・・・というとすぐに電話をしてくれるエミリー。

キャシーは、明日バスの時間は何時?もし午前中機会があれば飛んでみる?と言ってくれます。バスの時間は14時なので、午前中いっぱい気合い入れて寝るつもりでした(風邪が100%治っていないのです)。しかし、飛べるのなら飛びたい!キャシーにそれなら来ます!と伝え、また明日クラブに来る事になりました。

もし明日飛べなかったら、2月のweek offに来たいと思っています。いずれにせよ、また空に上がることができる日が楽しみです。

 

 

 

 

 

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