Week off ③ その4 自分の操縦に酔う

グライダーのコースは2日間。のはずでしたが、2日目はあいにくのお天気(、と言っても曇り空で、グライダーに適さないという意味での生憎)で、飛ぶことができなかったので、今日飛ばさせてもらえるということになりました。レッスン3日目です。

クイーンズタウンに戻るバスは14時。一本遅い便に変更ができたので、少しでも長く余裕を持って飛べるよう、昨日のうちにバスは変更しておきました。

グライダークラブからバスストップまで車で送ってあげるよとクラブの数人が気にかけてくれました。感謝。

グライダークラブ

今日実際に飛んだのは午後から。それまでは、午前中はいつものように10時から天気のブリーフィング、格納庫からグライダーを出して点検。その後は昼の飛ぶ時間まで休憩。今日もウインチは使えないのでtow planeで引っ張り上げるとのことです。

お昼休みの時間、受付担当の方とお話しすることができました。彼女はオマラマに越して来て10年以上経つそうで、越して来た時のこと、ここでの暮らしなんかをお話ししてくれました。オフィスには空や天気、飛ぶこと、グライダーに関しての本がたくさん置いているのでパラパラと見ていると、ニュージーランドに存在するグライダークラブ一覧が載っています。「クラブってたくさんあるんですね」と言うと、グライダークラブのことも色々と教えてくれました。「you come to the right place」オマラマは中でもグライダーに適した立地なので、世界各地から多くの人が飛ぶために数週間、一ヶ月と長期滞在して毎日飛ぶそうです。

日本人もいるわよ、と教えてくれました。女性の方が年に飛ぶためだけに日本から1、2回訪れるそうです。他にも数人日本人がいるとのこと。

3回目のフライト

12時にターミナル再集合と言われていたので、時間通りに向かい、しばらくは私、インストラクターのジェームス、デンマーク人の彼と彼のインストラクター4人で、敷地内にあるaircraftを見ながらぽーっと過ごします。

▲なんという平和な時間、、、

しかしこの黄色い子、めちゃくちゃでかいです。近くまで見に行ってみよっかとジェームス。小さな子どもが車を見た時に興奮する時ってこんな気持ちなんだろうなぁと、顔の筋肉が緩む私はこの黄色い大きな空飛ぶ乗り物を眺めます。

前後に座席が並び、後ろが操縦席。これで飛んだらどんな気分でしょうか。キャノピーはありません。風を、身体全体で感じられるでしょう、、、。

そうこうしているうちに、Tow planeが飛ぶ時間になり、昨日とは違うパイロットが操縦、まずはデンマーク人と彼のインストラクター、2人が飛び始めます。

▲準備する2人

離陸の瞬間を観察しましたが、ウインチよりも速度は遅そうです。ウインチを使った時の速さが気になったので聞いてみると、大体時速90kmだとジェームスが教えてくれました。

いよいよ自分たちの番になると、担当のスタッフが私たちのグライダーとtow planeをロープで繋ぎます。

空に上がるのは3回目ですが、曳航機に引っ張られる形で上がるのは初めて。何事も初めてはどきどきが止まりません!

待っている間、スタッフの方はフレンドリーに話してくれ、私が休みの日はクイーンズタウンにいると話すと、クイーンズタウンから通ってるメンバーが何人かいるよ。友達になって、バス代でグライダーに乗らなきゃね。クラブのメンバーシップにはなったかい?と。

話しているうちに準備が整い、いよいよ飛びます。スタッフが帽子を脱いで手に持ち、その手を大きく半円の弧を描くように振ってパイロットへ合図を送ります。反対の手ではグライダーの羽をもち、両方の翼が水平になるように高さを保っています。

そして、ブンブンとゆっくり前に進み始めるtow plane。彼も翼を持って数十メートル支えながら走ります!ウインチに比べればスピード感は全くありませんが、機体が浮く瞬間はやはりどきどきわくわく。想像以上にスムーズに宙に浮いて、滑走路から西へと飛び立ちます。道路を横切る形で標高を上げて行き、車が真下に見えます。

しばらくはレイクオハウ、プカキのある西へ西へとtow planeが連れて行ってくれ、ガチャン!と音がしたかと思いきや、綱は外されて、グライダーが空中にポツンと浮きます。ここからはthermal 探しが始まります。私は操縦せず、ある程度上昇気流にのっかって標高を上げてから、操縦をさせてもらうことになります。

一昨日の飛行1回目はなぜぐるぐる回っているのかよくわからないままグライダーの中で酔いそうになり、2回目は回ることを分かっていたので心構えをして乗りつつも酔いました。

3回目の今日は、ぐるぐるとまわることが、気流に乗っかって標高をあげるためだと理解した上で、乗っています。できるだけ頭の中での思考をストップさせて外の景色とジェームスの操縦に集中します。そのおかげか、酔うまで少し時間がかかりました。ジェームス「You have a control. Keep turning left. Stick to the left.」と途中で私に操縦の指示を出します。彼のぐるぐると回る旋回に比べて私はガタガタ、円をかけません。子どもの時に初めて紙に円を書いた、そんな風です。円になってない。昨日のレクチャーや一昨日の飛行の学びから、理屈は分かっています。それをパッと反射で操縦できるかと言われると別問題。酔ってる暇なく、全神経を集中させます。

一昨日よりも大分長く操縦させてもらい、much better, that’s rightとお世辞なのか、本気なのか、褒めてもらいました。

もう少し操縦していたい気持ちもありますが、自分のガタガタな旋回で気分は悪くなって来ます。その後も足のつま先から酸素が失われていくのを感じながら、何とかジェームスの操縦に集中し、回っては標高を上げ、を繰り返します。6000ftに到達した頃でしょうか。意識が遠くなり始めお腹の調子も悪く、酔いが強くなると感じ、ジェームスに気持ち悪いですと伝えます。「Alright we can go back.」

耐えに耐えなんとか吐くことはなく着陸。高度を下げて滑走路に着くまではスローモーションのように感じました。ぜんっぜん地面が近づいてこないのです。前回着陸する時に私の耳の調子が悪くなったから、わざとゆっくり降りてくれたのでしょうか。

着陸し、車輪はまだゴロゴロと動いている中「キャノピー開けていいよ!大きく息を吸って!」とジェームス。

地面に足がついて安心したからか酔いは弱まり、私はすぐにジェームスに話しかけます。「グライダーを始めた時は酔いましたか?酔わなくなるもんなんですか?自分の操縦で気持ち悪くなりました。」

1200時間空を飛んでいる彼は、20〜30時間飛んで練習し、操縦ができるようになってから酔うことは無くなったと言っています。「それはそうだよ、僕はもう1200時間乗ってるからね、君はまだ2時間」

そりゃそうだよな。

「サーマルだってどうやってわかるんですか?」「乗っていると感じるよ。上に押される感じがするからね。その空気の流れに対して戦おうとしちゃだめだ。それを受け入れて、ええっと何という言葉が正しいか。空気をstrokeするんだ」

確かこの時ジェームスはstrokeと言った気がします。空気を撫でる、ということでしょうか。空気の流れにに抵抗してパニックになってはいけない、ということです。なんだか人生のよう。前から横から後ろから飛んでくる予想もしない出来事を避けようとしたり無理に対処しようとするのではなくて、まずは受け入れること。

「一昨日も今日も大気が落ち着いてなかったね。もっとスムーズな日もあるんだよ」とも教えてくれました。酔うのは私の体質かと思っていましたが、もっとスムーズに上へ上へと行くことが出来る日はあるとのことです。そんな日は酔いにくいと。

こうして私のグライダー操縦体験、3日間は終わりました。

その後は、バス停まで送るよと、本当にたくさんの人に声をかけてもらい、キャシーのお父さまが送ってくれました。ありがたいです。

グライダーに乗ってみて

グライダーの存在を知ってから4年ほど、ずーっと乗りたい乗りたいと思っていましたが、今回やっと実現できました。やってみて本当によかった。

標高の高いところから景色を見るのが好きな私。山でもない、飛行機でもない、ヘリコプターでもない。エンジンのない、翼があるだけの乗り物グライダーにのって、風を感じること。その時に見える景色。他では味わえません。

もっと操縦できるようになれば風をさらに感じられるのでしょう。酔うことへの恐れ、酔い始めてからの朦朧とした意識、それらが障害になったのは確かです。

グライダーのことを考えるだけで旋回して気分が悪くなる瞬間を思い出してしまうので、今すぐまた乗りたいかと言われるとイエスと即答はできません。それでも、それを乗り越えた時には新しい世界が待っていること、足を踏み入れてしまったからこそ、よくわかります。

グライダーに興味が湧いた!とか興味があって調べていたらこのブログにたどり着いた、という人がもし、もし、もし、いましたら、ぜひお近くのグライダークラブを探して、メールなり電話、してみてください。

きっと、費用について気になる方は多いと思うので書いておくと、今回私の訪れたクラブでは1日の講習料が一対一でつきっきりだったのに対し1日につき300NZD、ウインチは1回につき55NZD、曳航機は1回につき140NZD。グライダーのレンタル費用が1時間につき120NZD。着陸に15NZD。ざっくりですがこの3日間で900NZD弱でした。

もっと気軽にできる体験なんかもあると思うので、それだと安く済むはずです。私は今回クラブに足を運び、素敵なインストラクターに出会い、キャシーや受付の方々とお話しして、新しいコミュニティに迎えてもらえたこと、そしてお天気にも恵まれ3回も飛べたこと、いくらお金をだしても手に入れることのできない経験だなと思いました。勇気を出してよかった。そんな自分にも感謝。

さてさて、長くなりました。

明日の昼前にはヘリコプターライドが待っています。そうです、小屋に戻る日です。ステーキにチキンを焼いて、カレーを作って、せっせか稼がなければなりません。

また、空飛ぶ日を夢見ながら。

 

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