今日は日曜日。週末にも関わらず、平日の忙しさが嘘のように、落ち着いた1日だった。落ち着いたと言っても、海の日以降の息つく暇のない忙しさに比べれば少しマシなだけで、個室も相部屋もほぼ埋まっているし、小屋を訪ねてくるお客さんはそこそこいる。
チェックイン手続きをしていると、前泊地の欄に涸沢のテント場と書くご夫婦がいた。他にも、穂高の山々はじめ、稜線上の山小屋の名前を書くお客さんはたくさんいるのだが、ここ最近は私の心にも時間にも余裕がなくいちいち山の話をすることはない。後ろにはお風呂にビール、売店商品のお会計待ちのお客さんがいるからだ。
今日は少しだけ、少しだけ余裕があったので、涸沢のテント場は混んでましたかと聞いてみる。土日でテン泊されたそうだが、混んでいなかったとのこと。私たちの小屋の中では、最近平日の方が忙しいよねと話が出ていたのだが、山の上でも同じらしい。
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毎日同じ仕事を繰り返していると、お客さんがどこの山へ行こうが、明日の予定がどうであろうが、なんだか流れ作業、事務作業のようになってしまう。明日のご予定は?うん、蝶ヶ岳ね。うんうん、奥穂ね。あぁ、北穂。どこから降りてこられましたか?ほう、南岳。はぁ、槍ヶ岳。しかし、きっとひとりひとりの山行は形も色も異なる思い出になり、道中の会話や食べたもの、見たものは皆違うんだろうなぁと思う。
私はここ、山小屋に来てから3ヶ月以上が経ちそんなお客さんを見送り、出迎え続けている。感覚が麻痺しているが、今いる場所は、地元にある山二つ分の高さである1500m地点であり、バスから降りて2時間も歩いたところにある森の中である。ここでの日常が私の通常になってしまっているが、お客さんにとっては非日常だ。
朝晩は涼しいこと、日中気温が上がっても30度は超えないこと、クーラーの風にあたる必要がないこと、昼から夕立が来れば気温がキュッと落ちて涼しくなること。車なんかの騒音はないし、空気も水も美味しい。
今日の夕立は、結構激しく、数時間続いた。あんなに晴れていた朝の天気は幻だったのかというほど、山の天気はコロコロと変わる。山を始めてすぐの頃から聞いてき台詞だが、今でも天気の変わりようには驚かされる。
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さ、明日は休み。明後日も休み。2連休だ。まだ山に行く気がしないが、少しだけでもいいから、走ろうとは思う。そして、ニュージーランドの山小屋のマネージャーとも話をする予定だ。航空券もそろそろ予約をしたい。そして、繁忙期に入り毎日できていない刺繍に時間を取りたいと思う。もう少しで今刺している図案が完成しそうだ。早く終わらせて自分の部屋の壁に飾りたい。
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