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19日目 イルカのタレ

昨日前入りした3名のスタッフは、21時過ぎに就寝し、6時間後には起きて3:30には小屋を出発した。お客さんと合流して、今日の行程である防鹿柵の設置へ向かう。スタッフは昼過ぎに、お客さんは夕方に戻ってくるので、それまでに私は最終的な準備をする必要がある。私はゆるゆると8:00頃から行動開始をする。

昨日、今日と私は本館にある管理人室と呼ばれる部屋で寝させてもらった。いつもは別の部屋に寝ているが、お客さんがいる時はこの管理人室で寝ることになっている。山小屋のざ・和室だ。とても居心地が悪い。うまく寝れず、寝ぼけているのか本当なのか、変な音は聞こえるし、すぐ目が覚める。スタッフ3人が出て数時間経っているであろうはずなのに、声が聞こえたりする。うん、寝ぼけているんだと思う。

午前中は、昨日のウイスキーを飲みながらの打ち合わせで指示されていた、やることリストを一つずつ済ませる。今日の夜は、お客さんが山から降りてきたら皆でお肉パーティー、BBQである。肉を焼く台を組み立てたり、食器類の準備をする。さらに、明日の朝ごはんの準備などもできることをなるべく済ませておく。

これらとは別件で、10時頃にはMさんとIさんが来てくださり、洗濯機の設置をしてくださる。正しくは洗濯乾燥機だ。2週間以上洗濯機なしで過ごし、残りあと10日と少しになった今、私は洗濯機の存在なんて正直言うとどうでも良い・・・が、スイッチ一つで洗濯ができるのなら、それに越したことはない。

Iさんは、新しいものを設置するだけでなく、前回諦めていたエラー表示ばかりでる壊れた洗濯機も修理する。Iさんが洗濯機の修理をする間、Mさんは厨房のコンロの火が安定しないと料理人から聞きつけ、その修理をしたりなんたりする。私は小屋の中を行ったり来たり、やらなければならないことを一つずつ済ませる。ここで私は、はっと気づく。3人の人間が小屋の中にいると、3つのことが同時で進むんだなあ。

そりゃそうだろ、と突っ込みたくなるだろうが、毎日1人で掃除をしている身としては、私が終わらせなければやることリストのチェックは増えていかない。私が何かをしている間、別の何かが済んでいると言うことは、今の私にとっては驚くべきことである。コンロを修理してくださるMさんや洗濯機を諦めず向きあっているIさんに感謝の気持ちが湧いてくる。1人で管理人をする機会がなければ、持つことのなかった感情である。

ひと段落したところで3人で昼食、そして2人はそれぞれのタイミングで下山する。入れ替わりで、3人のスタッフが帰ってくる。朝が早かった3人はお疲れモード、お昼寝タイムに入る。

夕方、予定よりもお客さんは早く到着し、私は皆の前で挨拶と館内の説明をする。人前で喋るのはいつぶりだろうか?そういえば、私はなんちゃって添乗員をしていたことがあった。その時の自分を思い出したが、あれから随分変わってしまったし、もうあの時の自分には戻れない気がする。人前で話してみて戻らなくていいとも思ってしまった。緊張するわけではない。今の自分は、こう言うことがしたいんじゃないと再認識した、と言う話。

BBQではお客さんとスタッフの関係性がとてもフラットで、私にとっては新鮮な空気の中お肉を食べお酒をいただいた。こういう形もあるんだなぁ。お寿司屋さんをされているというお客さんからはイルカのタレというものもいただく。私の聞き間違えかと思ったが、そう、海を泳ぐ、イルカである。タレとは漬けのような意味で、イルカの肉がタレに浸かっているものを焼いて食べるという料理。これはウイスキーじゃない、日本酒がいる。

いつもならとっくに自分の布団で寝ている時間、私は外の空気に当たりながら他の人間たちと肉を食べる。いつもと同じ場所にいるとは思えない。会話をしながら情報を交換して、共感して、自分以外の人が発する言葉に心を動かされる。笑い、食べ、飲んで、良い気分になる。みんなに肉がいき渡っているのかソワソワしながら、皆の皿の上をチェックして回る。

夜は、昨日と同じ管理人室で寝た。皆はラウンジでお酒を飲みながら何か話しているようだが、私は寝ることに集中する。がしかし、変な物音がして眠ることができず、結局トータルで数時間しか寝れなかったと思う。

 

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