今日は、お客さんが来る日。朝はのんびり起き、玄関を掃き、掃除しそびれたところはないか、あちこちに横たわっている虫たちを掃除機で吸い取り、床をもう一度吹き上げ、お客さんを迎える準備をする。
お昼過ぎ、まず到着したのはスタッフの1人と料理人。私は、夕方お客さんが到着するまで、料理人の仕込みのお手伝いをさせてもらう。ジャガイモを洗ったり、タルタルソースの下準備をしたり、野菜を切ったり。他のスタッフさんに、今回の料理人は少し気難しいところがあると聞いていたが、全くそんな雰囲気はない。ビクビクしていた自分が馬鹿馬鹿しい。
到着の1時間前くらいからは厨房と風呂場を行ったり来たりして、風呂のお湯を沸かし始める。水と70度前後のお湯を、徳沢で鍛えられた勘に頼りながら、いい具合の割合で入れていく。
仕込みの助手として必死になっているところ、厨房の外から、複数人の話し声が聞こえる。あ、お客さんが到着したのか。私は、支配人というより、お留守番をする管理人、なので前に出ることなく、スタッフの方々が館内案内をしているのを遠目で確認する。
その後はお風呂の時間、8品にわたる鹿肉をメインとしたコース料理を2時間かけて楽しみ、ひと段落した後は外でシガータイムが始まる。お客さんの1人に葉巻を持ってきた方がいて、スタッフも料理人も皆が葉巻に火をつけ始める。ウイスキーを飲みながら。
私もひと段落したので賄いをいただき、お腹にクッションを詰めた後ウイスキーに手を伸ばす。それをベランダにいる葉巻を持ってきた方が、目撃(!)。「さやかさん、葉巻吸ってみない?」このお誘いは実は2回目で、1回目はやんわり断ったのだが、2回目となると断るのも・・・というのと、興味はあったので「では」と、薄めのハイボールを持ってベランダのおじさんズに混じる。
(ここで飲んでいるウイスキーは、1本うん万、樽を作るのにもうんうんうん万するらしい。金額とお酒の質の関係性はいまだによくわかっていないが、美味しいお酒だということは、よくわかる。安い居酒屋ではハイボールなんてもう飲めないかもしれない)
おじさんズの輪に入れてもらい、座るや否や、葉巻の火の付け方、吸い口の開け方(というのか?)、吸い方、肺に煙を入れずに口の中で味わって吐き出すこと、小さな子どもでもわかるように丁寧に教えてもらう。「さやかさん、良かったよ。さやかさんに葉巻の2回目がなかったとしても、0か1の違いは大きいからね。うん。」これはこの1、2年で私が強く感じていることでもある。「思っていたのと違います・・・。何かを食べているような、コーヒーのような味がしますね」その後は、葉巻を吸いながら食べるのなら、何が合うだろうかという議論が始まる。やっぱり肉がいいと言われているんだけどね、という方に対し料理人は、「煙たさがすでに口の中にあるのが、スモーキーなチーズを思わせるから、それに合うようなオリーブとかパンとか、ハムとか、そいういうのがあると良いかも。アイスとか杏仁もいいかも」吸ったり吐いたり煙のサイクルが確立されていない私は、なんとなく真似をしながら少しずつ葉巻を短くしていき、会話が面白いなぁと、聞き役に徹する。
ベランダからは星がくっきりと見える。ラウンジの電気を全て消し、タバコほどねっとりしていない緩やかな煙がふわりふわり、星空に吸い込まれていく。これまでに山の中で怖くなるほどの星空は何度も見てきた。でも、今日の星空はいつもとは違う。「この匂いは数日は消えないからね」
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明日は、皆で登山、私はお留守番係なので小屋に残って掃除の予定だ。
【本日会話した人間の数、8人】

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