Week off 2日目の夜、アニーと合流し、アニーの友人エミリー宅に宿泊。翌日朝6時過ぎ、日が昇る前のクイーンズタウンを出発。今日の目的地はEパスです。
アニーの友達、エミリー宅に滞在
アニーは、1シーズン目に一緒に働いた、“キウイの物静かなアニー”、彼女は現在大学生。お医者さんを目指し、今期は学校での授業はほとんどなく病院で研修を受ける日々だそう。
アニーの友人であるエミリーの家は、ご両親が週末遊びに来る”セカンドハウス”、つまり別荘。家の中にはいくつもベッドがあり、この週末はエミリーの友人が集まり、私含めて8人が泊まっています。家に入るとワイワイと”健全に”楽しんでいるキウイたち。人見知りしてしまう私は、何が何だかよくわからない状況。聞くところによると、学生だったり、カヤックのガイドだったり、山好き、岩好き(クライミング)の若者のようです。
家があるのはクイーンズタウンのワカティプ湖沿い。この辺りは、ブリッジと今シーズンの初めてのウィークオフ、クイーンズタウンからフランクトンまで歩いた時に通りました。こんな景色の良い場所に住めたらいいだろうなぁと思っていたところ。別荘のような家が並ぶ家の一つが、アニーの友人宅だったのです。
大学デビューしたアニー
アニーは、私が1シーズン目の山小屋日記で”キウイの物静かなアニー”と呼んだように、彼女に対しては物静かな印象を持っていました。しかしあれから3年、アニーはしきりにダークな冗談をかましており、賑やかな友人たちの中で、ケラケラと笑っています。アニーの素の姿はこっちだったのか。そんなアニーと一緒にいる友人たちも、明るく楽しい人たちばかり。友達とわいわい集まって週末を楽しむなんて、私は大学生の時以来です。はー。年取った。
Eパスへ
Eパスへの日帰りハイキング。このプランについて話すと、アニーの友人たちも、私の小屋で働く皆も、クレイジーだよと口を揃えて言います。確かにどこか一泊すべき行程です。しかも、天気は午後悪化する予定です。
少し不安ではありますが、私はアニーの経験が豊富であることを知っているのでアニーについていく事にします。彼女にも伝えましたが、ひとまわり以上歳が離れているとは思えません。
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クイーンズタウンを出発したのは朝の6時過ぎ。マクドナルドでコーヒーを買って、3時間のドライブを経てハイキングのスタート地点ディバイドに到着。そこからてくてく、歩いてまずはM小屋を目指します。そうです、私の働く小屋です。
空は雲で覆われますが、青空も山もちらりちらりと見えるような、そんなお天気。こうやって2人で歩くのは、3年ぶりです。

▲アーランド滝

▲左手サニークリーク、右手アーランド滝
彼女はDOCが設置しているトラップ管理の仕事を去年一年間していたこともあり、トラックや自然に関しては詳しく、聞けば答えがスッと返ってきます。そんな仕事の話を聞いたり、彼女の大学生活の話を聞いたり、私の小屋での話をしたり。時には無言で歩いたり。
トラップの中にいたネズミが生きていたので持っていたハンマーで殺さなければならなかった話、なんかもしてくれました。一発目外してしまい、二発目で無事命中。自分の目を手で覆ってハンマーで頭を狙ったと言っていました。
お昼過ぎ、私たちはM小屋に到着。私が今日小屋に来ると言うことを知らない皆は驚いている様子。遠慮のかけらもなく、小屋に入ってトイレを済ませ水を汲み、フルーツを盗む私。今からどこに行くの?今日はどこに泊まるの?とリンやセシア、シェリーから質問攻めを食らいます。セシア「昼ごはんは持ってる?」私「アニーがパンとチーズ、トマトを準備してくれてる」セシア「that’s my kinda food !!!」私「アニーはDOCのトラップの仕事してた。and she is gonna be a doctor soon」アニー「Not soon, 4 years !!」
私たちは小屋を離れ湖で昼ごはんを済ませます。アニーは日本語を1年間勉強していたと教えてくれます。「わたしの、なまえは、アニー」そして、高校生の時にはフランスに一年間行ってフランス語の勉強もしていたそうです。「何言ってるのかNo ideaだったよ」
休憩をした後はEパスを目指します。時間的にEパスてっぺんまで行くのは難しいでしょう。ここからはオフトラック。トラックはありません。DOCの設置しているトラップを示すサインがありますが、頼りないものばかりです。

まずは水が流れる川沿いをずんずん進んでいきます。ずんずん。アニーの勢いは、止まりません。迷いなく右足左足が前に出ています。一方私の足は10秒頭で考えて一歩、さらに10秒考えて次の一歩といった調子。足の置き場がわからない時はアニーに助けを呼び、足をどこに置くべきか尋ねます。人が頻繁に通る道ではないので、人の気配は全くなし。何にもない自然の中に身を置く、いつもの生ぬるいハイキングや山歩きとは違う感覚を覚えます。この感覚は日本の山奥に足を踏み入れた時の畏敬の念とか、森に漂う厳かな空気とかそういうものからはかけ離れています。日本の森の中で古代の人々と自然のつながりを感じることができるとすれば、ニュージーランドの山の中では地球に生命が宿った日、緑がグングンと地上に広がった日、そんな瞬間を思い浮かべられるような気がします。ちょっと壮大すぎますか?そのくらい人の気配がないという例えです。
川には冷たい水が流れており、深くはないものの、川から頭を出したぬめっと滑りやすい岩に足をおかず川に足を突っ込むものならしっかり濡れる深さです。岩の滑りやすさは抜群。そんな岩でも、スイスイっとジャンプして進むアニー。転ける前に次の足が地面についています。私はそんなことは怖くてできませんから時には足を川に突っ込んで最短距離で反対岸に渡ります。

随分と川で水遊びした気がしますが、おそらく水の流れる川を遡っていくこと15分。川は枯れ、傾斜がぐっとついた坂を登って行きます。

振り返るとこんな景色。

アニーが仕事で一月に来た時は、ここにも水が流れていたそうです。川が枯れていることに驚いている様子。その時は膝下の深さだったそうです。枯れた川と書きましたが、沢とか滝の方がイメージは近いかもしれません。岩は大きくなり、足の置き場はさらになくなっていきます。こんな場所、水が流れていたら私は登るのを諦めたでしょう、、、。
アニーに何度も何度も足の置き場がわからないと嘆きその度にアニーは私のところまで引き返して、「こっちだよ」「手、掴む?」「こっちの方が良さそうだね」と助言してくれます。これ以上のハイキングパートナーは求められません!
しばらく行くと傾斜も、岩の様子も落ち着いてきて、歩きやすい道になります。いや、正確に言うと人が通る道ではありません。水が通っていた道です。それでも角度はキツく、自分にとって適度な速さで進まなければあっという間に息は上がります。
1シーズン目に、アニーが休み時間に誰よりも速く長く走っており、マネジャーのみんなのお母さんエミリーは、小柄なアニーのことを”リトルマシーン”と呼んでいました。それを思い出し、私はアニーに「エミリーに、アニーはリトルマシーンどころかでっかいマシーン背負ってあの時より速く歩いてましたって報告しておくよ!!!」と言うと、笑っています。

▲私はアニーに、「あそこまで行ったらセカンドランチ食べよう」と提案
平らな場所があるよと教えてくれ、そこまで行ってランチタイム。「ここからの景色、山が見えて素敵なんだけどねぇ。」「向こうの雲の下にはダランマウンテン山脈?」「そうそう」「あっちの山は見えないけど左手に滝は見えるし後ろのEピークも、右手の山も見れて良かったよ。何にも見えないと思ってたから」「期待がめちゃくちゃ低かったんだねぇ」
岩に座ってお昼ご飯を食べていると、日本と同じように稜線の上でしか触れることのない風を肌で感じます。「森林限界よりある程度上に出るとさ、風変わるよね。この風を日本で感じたかったら2400m以上登らないといけない。今私たちの標高どのくらいだろう?1200mくらいかなぁ」そんな話をするとアニーはすぐに携帯で確認してくれます。「おー!ばっちり!1200mだよ。ピッタリ当てたね」私はこの風に触れるために山に登っているのかもしれません。
濡れながらの下山
お昼ご飯の後は、アニーがこの後どうしたい?と確認してくれ、私はゆっくり下山!と即答。アニーの背中を追いながら、ゆっくりゆっくり下山していきます。岩の箇所は登るよりも下る方が怖さを感じます。アニーが、私の足踏み台にしていいよ、とも言ってくれます。(去年の秋に奥又白池に行った時にも同じようなことが起きました。)


M小屋までは2時間弱でしょうか。上りと同じくらいの時間をかけて下山。ここからは、人間が毎日歩いている”道”の上を歩くことになります。「ここまできたら平らだね」平とはいえ、アップダウンはもちろん続きます。

▲湖まで下山。あそこまで行ったんだよねとアニーに再確認。
徐々に雨も降り出し、気温も下がってきます。服は濡れ、足を中心に一気に疲労が襲ってきます。足の付け根が上がらなくなり、段差があるとスローモーションになる私。アニーとの差がつき始めたのでアニーが、先にどうぞと、私の後ろを歩いてくれます。数ヶ月運動しておらずいきなりハイキングをすると身体はこうなるのかと改めて思い知らされます。いつもならハイキング前は身体を慣らしておこうとそう言う思考が頭をよぎりますが、今回は全くそんなことを考えていませんでした。準備運動、事前の備えが不十分でした。
雨は止まることなく強くなるばかり。風もあり、止まると急に寒さを感じます。無で歩き続ける私。「the rain doesn’t bother you ?」とアニーに雨音に負けないよう叫んで聞くと、「no, it doesn’t bother me. It is nice to walk in the rain」とさえ言っています。おんなじ雨でも、止まってほしい、濡れたくない、寒い、鬱陶しいと思う私もいれば、雨の中歩くことを楽しんでいるアニー。
早くつかないだろうか、いつ終わるんだろうかという考えは捨て、無で歩き続けること数時間。「car parkだよ!ついたよ」と私の後ろから叫ぶアニー。嬉しくてたまらない私。濡れて冷たい体でアニーの車の中に乗り込みます。時間は20:00を過ぎています。21:00に閉まるテアナウのフィッシュアンドチップスに行こうと話していましたが、間に合いそうにありません。
テアナウに着くとどこも店じまいしており、食べ物を手に入れるのは諦めます。アニーが買っておいたビスケットを食べながら、私たちはクイーンズタウンへ。私はうとうとしながら、アニーも閉じてしまいそうな目をなんとか開けながら3時間運転してくれました。
アニーの友人エミリー宅に着くと、何人かが私たちの帰りを心配して待ってくれています。夕食は皆でナチョスを食べたと言うことでその残りをトーストに乗せていただきました。
1:00前、ベッドに横たわり、あっという間に眠りにつきます。足が思うように動きません。一晩寝れば少しは回復するでしょうか。
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▲3年前のアニーとのハイキングの様子

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