日帰りで花の百名山・平標山へ

福岡人からすると東北や北陸地方って、どうも北海道より遠い感覚があるんです。(え、私だけ?!)関東に越してきてからも、新潟に日帰りで山に行こうなんて考えたことはなく、「新潟県=米、酒、以上!」レベルの私でしたが、新緑の時期に次に行く山の候補を探していると、平標山の文字を見かけることが多く、気になって行ってきました。

前日、SCW、てんくらをチェック。天気も良さそうだし、風はなさそう。これは行くしかないと交通手段とルートを前日にバタバタと確認。地図も購入。よし行こう!と決めたのは前日の夕方でした。【都内から新潟へ行き、山に登り、ご飯を食べて、都内に帰ってくる】この全てをこなすことが日帰りで可能ということに驚きながら、5時台の電車と新幹線で越後湯沢に向かいました。

アクセス 越後湯沢〜登山口

都内から行く場合は新幹線が早くて便利です。時間をお金で買うってこういう事かと実感しながら始発の新幹線に乗り込みます。前日に買った地図を忘れた事に気づき、揺られること1時間。あっという間に新潟県に到着です。駅からはバス(南越後観光バス)を使って1本で登山口に行くことができます。

登山口まで一本で行けるなんて珍しいね。

登山口でバスを降りて、元橋駐車場を通り過ぎればすぐに登山開始。平日でしたがバスはそこそこの乗車率。満席とまではいきませんが、週末だと座れなさそうだな、ってくらいの混み具合。
帰りは17:00台のバスに乗りました。こちらも同じ様な混み具合。本数は多くないので事前に要チェック。日が暮れると真っ暗になってしまいます。登山口付近は車の通りも少なかったです。

平標山登山口〜松手山

登山口からは松手山経由で登りました。登山口バス停から元橋駐車場を通り過ぎ、数分平たい道を歩くと階段上の登山道になります。赤城山を思い出すような坂でした。

スタートから飛ばすな注意、後からへたばるよ。

危険箇所はなく、しばらく森の中を淡々と上がっていきます。約1時間ほどで送電線、そこから1時間弱で松手山です。それまで景色は開けないので、余計登りがしんどく感じます。6月中旬のお天気が良かったこの日はすぐに汗をかき、体力を奪われた記憶。松手山から歩いてきた道を見下ろすと・・・
松手山を通り過ぎると、景色が一気に開けてと〜っても気持ちよくなります。

この辺りでお花に囲まれる瞬間が数メートルありました。ピンクや黄色、白の花に囲まれ、山登りに着たはずなのにお花屋さんに来たような気分。登山口から抜きつ抜かれつだった女性2人組は「今日はアイドルがたくさんよ!!!!!」カメラを片時も離さずに、アイドルの名前を呼びながら歩いていました。

松手山〜平標山山頂

景色が開けて気持ちいい稜線歩きができる一方、なかなか山頂が近くならないのも事実です。この辺から結構くたばり始めました。(早い)

え〜〜〜まだこの坂続く???

開いた口が塞がらないほどの坂の連続です。そりゃそうか、山登ってるんだから・・・。山頂方面を見ていると気が遠くなるけど、振り返るとこの絶景。

新緑と雪を冠った新潟の山々が美しいのなんの。写真の右側に見える平たい山頂はフジロックでおなじみの苗場山です。さらに登ると苗場山が目線と同じ高さになっていきます。

お花畑往復 8月の苗場山 (途中撤退)で会える高山植物
フジロックで有名な苗場山。山登りの山として認識しておらず、でしたが、平標山からその姿を見たときにどんな山なんだろうと不思議で、その2ヶ月後に行ってきました。 東京からの新幹線の中でぐっすり寝てしまい越後湯沢で下車し損ね、スタート時間が遅れた...

そしてやっと山頂。あちら方面は八海山のはずです。

山頂に着くまでに、この日の登山者全員に抜かされたんじゃないかってくらいみなさん先に行くもんだから、山頂に着くと知らない方々から

「遅いからあの子大丈夫かなって心配してたよ〜」「おぉ〜、やっと着いたね〜。おつかれさま〜」

と声をかけていただきました。ありがとうございました。(涙)

平標山〜仙ノ倉方面

亀ペースで歩いたため時間がなく、仙ノ倉山山頂までは行けませんでしたが、途中ですれ違って羊羹をくださったご夫婦(ありがとうございました‼︎)に

「ぜったい(仙ノ倉方面へ)行った方がいい。行かなかったら後悔する」

と真顔で言われたので、平標山から仙ノ倉山方面へ少しだけ歩いてみました。丸太で作られた階段を下りて行くと、そこはお花畑

ゼッタイ疲れてても行った方がいい。行かなかったら後悔する。

平標山〜平標山の家〜登山口

山頂で休憩した後は、来た道とは違う道から下山です。木道の階段が平標山の家までず〜っと続きます。赤い小さな屋根がそれです。

振り返ると、かなり下りてきたことに気づきます。

途中シャクナゲロード(勝手に命名)がありました。花自体は力つきて茶色がかっていましたが、1〜2週間前くらいに来ればこの辺はピンク色で覆われてたんだろうなと思います。

雪が残ってる部分も少しだけありました。

小屋には、平標の鐘がありました。結構大きな音で、小屋の回りにいた人たちの目線を集めてしまいました。(笑)

この小屋からは樹林帯に入ります。最後まで下りきるとこの看板。

終わりかなと思いきや、ここからは整備された道を1時間ほど歩きます。トイレ&バスの時間との戦いが始まります。途中オアシスのような場所もありました。

平標山 6月初旬の高山植物

この日はたくさんのお花に出会いました。お花にそんなに興味がない方は、読むと眠くなると思います。飛ばしてください。

ムラサキヤシオツツジ

恐らくそうです。本州の近畿以北〜北海道に分布。ツツジは種類が多くミツバツツジやアカヤシオも似たような花です。ムラサキヤシオツツジのヤシオの意味が気になって調べてみると紫で何度も(8回)染めたような色という意味だそうです。花の名前を覚えられない時は、和名や漢字を調べるに尽きます。

ツマトリソウ

ピントが甘いのは許してください

7枚の白い花弁と黄色のおしべ(やく)が小さくて可愛い、好きな花リストに入る花です。初めて見たのは上高地〜涸沢の登山道でした。サクラソウ科ツマトリソウ属に属します。和名は褄取草。花弁の縁(=はし)がほんのり赤くなる姿からその名前がついています。さらに詳しく調べると2つ解釈があるようです。着物の袖の端(=褄)をつまんで持ち上げることを褄取りと言うそうです。縁が赤くほんのり染まった姿=褄取りをすると着物の裏地の赤色が見えることからこの名前が来ているようです。もう一つの解釈は、褄取る=鎧の端を別の色で継ぎ合わせること(縅す)からきています。個人的に前者の解釈が好きです。

花を調べると日本語と漢字の勉強になるね。

前回も今回も花は真っ白でした。名前の通りほんのり赤くなっているのは珍しいようです。

シラネアオイ

小さな花に気を取られていると急に現れる手のひらサイズのシラネアオイはお化けのように大きく感じます。漢字では白根葵と書きます。道中2カ所、咲いている場所がありました。このお花を好きな人は多いのではないでしょうか。日本にしか咲かない花、固有種です。そして一属一種の花。キンポウゲ科シラネアオイ属。シラネアオイ属に属する花は他にないということです。

貴重。

ハクサンイチゲ

こんなにわんさか咲いているハクサンイチゲは初めて見ました。山頂まで永遠と続く階段の途中に、群生していたのでしばらく写真を撮って休憩しました。キンポウゲ科イチリンソウ属の花で、雌阿寒岳で見た、ヒメイチゲと同じ仲間です。漢字で書くと白山一華。そういえば、利尻山でも似たような花を見ました。白山の前に北海道で咲くということから蝦夷が付いてエゾノハクサンイチゲと言います。北海道の花は毛深いとどこかに書きましたが、エゾノハクサンイチゲも茎がふわふわしています。

ヨツバシオガマ

前に進むのが辛い、だがしかし…ここから戻る訳には行かない、とにかく一歩、その一歩を出すのに必死だった山頂付近で、前を歩くおじさまおばさま軍団に急に呼び止めれました。

「おね〜ちゃん!そこ!!そこそこ!それヨツバシオガマよ!」

前に出す足を止めて指されたところを見ると、ヨツバシオガマが咲いていました。ハマウツボ科シオガマギク属。シオガマにも種類がたくさんあり、段の数や一段に付いている花の数、葉の形で見分けるそうです。よくよく調べてみると、これはヒメヨツバシオガマかもしれません。ヨツバシオガマは30cm前後なのに対し、ヒメが付くと10cm前後。平標で見たシオガマは小さく岩の横にちょこんと咲いていました。ちなみに、礼文島でも同じような花を見かけました。レブンシオガマ。見分け方は簡単です。10段以上あればレブンと名乗っていいそうです。

ハクサンコザクラ

サクラソウ科サクラソウ属のお花です。雌阿寒岳で見たエゾオオサクラソウのお仲間さんです。花弁の中心がオレンジ、その回りが白、とってもかわいい模様をしています。平標山の山頂から仙ノ倉山の方へ少し下るとハクサンコザクラがたっくさん咲いていました。

イワカガミ

イワウメ科イワウメ属です。この花に会う度に、写真の撮り方に困ります。ラッパのような形をしていて下を向いています。

ミヤマキンバイ

黄色の小さな花が、ミヤマキンバイです。漢字で書くと深山金梅。バラ科キジムシロ属です。似た花に、ミヤマダイコンソウ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、リュウキンカなどなどあります。

ややこしい。

ざっくり比較してみました。

ミヤマキンバイ:バラ科キジムシロ属▶︎萼片と花弁がある。花弁中央部はオレンジ色。
ミヤマダイコンソウ:バラ科ダイコンソウ属▶︎葉は丸い形。花弁はハート形。
ミヤマキンポウゲ:キンポウゲ科キンポウゲ属▶︎花弁に見えるのは萼片。光沢がありプラスチックのよう。
シナノキンバイ:キンポウゲ科キンバイソウ属▶︎葉はギザギザ。花弁に見えるのは萼片。
キンバイソウ:キンポウゲ科キンバイソウ属▶︎花弁に見えるのは萼片。線状の花弁はおしべより長い。
リュウキンカ:キンポウゲ科リュウキンカ属▶︎葉が丸っこい。花弁に見えるのは萼片。

バラ科は萼片と花弁があるのに対して、キンポウゲ科は花弁のように見える部分が萼片という花が多いようです。花を当てるには、花だけではなく、萼片や葉の形で見分けるのがコツのようです。花博士までの道のりは遠い。

ミツバオウレン

似た花にバイカオウレン、ミツバノバイカオウレン、オウレンがあります。どれもキンポウゲ科オウレン属。そうです、花弁に見える白い部分は萼片です。ミツバオウレンは名前の通り、葉が3つに分かれています。バイカオウレンは梅花黄蓮と名前の通り梅の花を思わせるようなまるっこい萼片に葉は5つに分かれています。梅の花のようだけど葉は3つに分かれているのがミツバノバイカオウレンです。オウレンはどれよりも萼片が尖っています。

ユキザサ

ユリ科マイヅルソウ属。名前の通り、雪のような花に笹のような葉。これは至ってシンプルなような気がします。

この他にも

チングルマ
コケモモ
サラサドウタン
ウラジロヨウラク
ヤマツツジ
タニウツギ
などなどたくさん見ました。

越後湯沢駅で八海山

下山した後は、「新潟県=米、酒、以上!」の私ですので、しっかりお米とお酒を楽しみました。居酒屋に行くしてはまだ早い時間帯ではありますが・・・、ゆた に行ってきました。営業が始まって間もなく貸し切り状態です。

見ての通り、おにぎりの居酒屋です。お酒を飲みたい、つまみだけじゃなくてしっかりお米も食べたい私たちにぴったり。

八海山をなみなみに(というかこぼれてました)。

駅から徒歩圏内、新潟の山に来たときはもう一度行きたいお店です。
https://www.onigiri-yuta.com/

八海山梅酒がさいこう。

最後に

花の百名山に選ばれてるだけあり、お花がコレでもかと咲いていました。上で紹介した花もほんの一部。

体力が追いつかなくて写真どころじゃないのが残念・・・

お花を見るだけでもくる価値ありでしたが、この日はお天気が最高ということもあり、山頂からは360度、新潟の山々を見る事ができました。小屋でお話したおじちゃんによると、「毎年、平標〜谷川を縦走するんだけど(ここの稜線は本当に最高ですよ)、こんなに1日中お天気がいいことってなかなかないよ。ラッキーな日に登りましたね」山に来ると曇ることが多い私ですが、この日は下山までしっかり晴れでした。山の神さまに感謝です。新潟が好きになった1日でした。

おわり。

羊羹をくださったおじちゃん「前なんか見なくていい、何を成し遂げて来たか振り返ればいい」

✏︎2019.12.2

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